あー、まじか。
季節外れの風邪から回復し、3日ぶりに教室に足を踏み入れたら、わたしの席であるはずの窓際一番前にキラ女軍団が群がっていた。
ちょっと、そこ、わたしの席なんだけど。あんたらの席は廊下側でしょ。どいてよ。
と、直接言う度胸なんぞあるわけもなく。こんなときに限って数少ない友達の弥生の姿は見当たらない。チャイムが鳴るまであと5分。わたしはドア前で立ち尽くすしかないのか。いや、トイレ行くか。カバンはロッカーに押し込んで……。
「悪い、ちょっといいか」
「ハイスイマセン」
突然背後からかけられた声に世界レベルのスピードで避ける。そうだよねここ出入り口だもんね。邪魔ですよね。ぼっちはトイレ行きます。
「あれ、上原」
「…………どうも」
エーット、岩泉くん、だ。高2になって早3ヶ月、クラスメイトの顔と名前がやっと一致してきた。背の高い同じクラスのその人は、鋭い目でわたしを見下ろす。
「座らねーの?」
「や、あー……」
キラ女軍団に席を占領されてるから居場所がないんです。なんて言えないし。いい理由ないかな、と頭を必死に回転させた、が。
「あ、席替えしたの知らねぇのか。金曜日いなかったもんな。ここ」
そう言って岩泉くんが指さしたのは、廊下側一番後ろ。なんと、席替えが行われていたとは。確かに6月の終わりかつ金曜日であった3日前は、席替えにぴったりだ。どけやクソ女共って思ってごめんなさいキラ女軍団。そして教えてくれよ弥生。
「あー、ありがとー。助かります」
「おう」
お礼を言って席に座ったとほぼ同時ぐらい。どん、と重いなにかが机に置かれた音がした。隣の机を見ると白いエナメル。持ち主は、彼。
「え、お隣ですか」
「ん?おう、よろしくな」
「あー、はい、こちらこそ」
全然よろしくする雰囲気感じられないんですけど。
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