中学の頃から、なんとなく気が合って一緒にいることが多かった。御幸とだったら男女の友情ってのがあると思えたし、今もそう思っている。
高校を青道に決めたのは制服がかわいいっていうのが一番の理由だけど、御幸と離れるのが寂しかったのもあるかもしれない。
そうして青道高校に入学したわたしは、御幸との五回目の秋を迎えていた。
・ ・ ・
「あたしらって付き合ってんの?」
「はあ?」
昼休み、二人で歩いていたところを担任に見つかり小教室に閉じ込められた。どうやらわたしたちは雑用を押しつけられるらしい。たくさんのプリントを運んできた担任に、同時にため息を吐いた。それが十分前のこと。
そして今、三枚のプリントをホッチキスで留めるという短調な作業に飽きてきたから雑談を振れば、心底呆れたような声を返された。
「最近、御幸と付き合ってんの?って言われること増えてさあ」
「おう」
「何回も言われるから、なんか付き合ってるような気がしてきたんだよね」
「ばかだろ」
「御幸が活躍するせいだよ」
「褒めるなよ」
にやりと笑って御幸が言う。褒めてないし。
「それで、名前はなんて返すわけ?」
「付き合ってないよーって」
「……へぇ」
「昨日は一年生の子が来たよ」
「俺のとこにも来たぞ。三年生が、名字さんはお前には渡さん!!って」
ぱちん、ぱちん。ホッチキスが白い紙をまとめていく。あと十枚ぐらいだろうか。
「まじで。紹介してよ」
「名前はもう俺のものですって言っちゃったから無理」
「は、」
ばちん、きちんとプリントを挟めなかったせいで、針がはみ出した。けれどそれを直す余裕もなかった。
「なんて?」
「名前は俺のものって」
「……嘘じゃん」
「本当にすればいいじゃん」
お互いの手が止まって目が合った。御幸って、こんなに男っぽかったっけ。
「うちら、友達じゃないの?」
「俺は、友達じゃなくて彼氏になりたい」
レンズの向こうにある瞳がやけにまっすぐだった。こんな御幸、知らない。気が合う友達の御幸が、いない。
「名前、」
「ひっ、わ、わわあわわわたし、トイレっ!!」
立ち上がった衝撃で椅子が倒れた。でもそんなことには構ってられなくて、廊下を走る。先生の注意なんて聞いてられない。
ああもう、心臓うるさい!!
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