お正月の日常


「現世は年が明けたそうです、あけましておめでとー!今年もよろしくお願いします!」
「と、いうことで〜?」
「かんぱーい!!」

私、弟の流れで次郎ちゃんの音頭により酒、お茶、ジュースの入った容器を思い思いに上げ皆で乾杯する。
あげ方も個性が溢れており、小さくお上品に上げるものもいれば思いっきり振り上げた反動で中身がこぼれ、早速テーブルを汚す者もいる。
厨組は忙しなく動いて周囲の世話を焼き、主とその姉である私は上座の方で小さく容器を当てて乾杯した。
「いやぁ〜、主の姉さんってば鬼かってくらい扱いてくるんだもん。今じゃいい思い出だけどさ」
「大太刀が石切丸以外いなかったからね。即戦力大事」
「厚樫山ブートキャンプな…任せといてなんだけど1日で練度50上げるってどんだけだよ、って思ったわ」
「そうそう。三日月もえらい目にあったよねえ?」
ちゃんとフォロー出来るだけしたし…と内心で言い訳をしつつ次郎ちゃんのジト目から逃げるようにジュースを口にした。弟の感想に続けて次郎ちゃんは厚樫山ブートキャンプでドロップしたじぃじ…三日月宗近に視線を向けた。
その言葉に傍にいたじぃじは飲もうと小さな杯を運んでいた手を止めてこちらを見る。うん、じぃじは今日も綺麗だ。
「確かに休む暇もなく出陣の繰り返しではあったが、振るわれる事には喜びを感じたな」
「確かに兄貴よりはまだ…とはいえ、アタシも振るう人なんていなかったから…そうなんだけどさあ」
「まあ、このはは俺の孫だ。饅頭受け取ったからな」
「饅頭受け取るか受け取らないかが基準だったのか!?」
そう言えばそんなこともあったなあ、と思う。そうか、じぃじが孫扱いしてくれるのは饅頭が原因だったか。やったぜ。
驚きで目を白黒している弟を尻目にお酒羨ましいな、と見ていれば燭台切が私の頭に手を置くように諌めた。
「まだ胃が本調子じゃないんだからお酒はダメだよ」
「わかってるよぅ…」
「だったら物欲しそうな目はやめるんだね」
「うっさい、歌仙。そんな目してないし」
「口調」
「ひゃい!…はい」
新年早々にハリセンをどこからか持ち出した歌仙に悲鳴と返事が混ざった。それを言い直して視線をジュースに落とす。
周囲のどんちゃん騒ぎは、まだまだ始まったばかりで、これがいつまで続くのだろうか。いつまで、聞けるのだろうか。
ふと考えかけた時、じぃじに話しかけられる。
「そんな顔をするな。主もお前も、共に」
どんな顔をしていたのだろうか。じぃじの言葉は傍から聞けば、何のことかわからないだろう。
口を開きかけて、閉じる。
そうだね、と心の中で返事をして、お節の取り合いに白熱したり野次を飛ばしたり。我関せずといった態度でいるにも関わらずちゃっかり確保している刀剣男士達を眺める。話が聞こえていたようで、弟も穏やかな表情で同じように視線をそちらに向けていた。

ずっといっしょ。この本丸の、みんなのひみつ。
いつかの日を怯えなくて済む、血なまぐさいけれど心地いい安寧の地と、
いつか逝く、私たちだけの居場所に思いを馳せた。

「よーし!次郎さんやっちゃうよー!」
「次郎太刀の樽飲みだー!!」
「おいこれまた暴れ出すだろ!」
「どうじょうだけじゃなく、ほんまるもこわされちゃいますよ!」
「誰か止めろー!」
「わー!次郎!ストップ!ストップ!!」

樽を担いだ次郎ちゃんに周囲が飛びかかり大乱闘の騒がしい、のんびりグダグダとは程遠い正月が明けていく。
さて、明日からまた出陣続きだ。
イベント走らなきゃね。