もう長引かせるのもアレだ、だらけるだけだ。
任務の詳細を暴露しよう。ストレスで発狂したいけれども、発狂したところで時間を無駄に過ごすだけである。脳内暴露だ。誰に言うでもない、いつもの思考の脱線のようなものだ。っていうか処理しきれないのだ、考えなきゃいけない事も、やらなきゃいけない事も多過ぎて。
だから暴露だ倍プッシュだ。
こんのすけから告げられた任務はこうだった。
「これは審神者様だけに課せられた任務です。これから歴史修正主義者が起こそうとする……救済を阻止せよ」
救済
ある対象にとって好ましくない状態を改善して望ましい状態へと変えること。
確かこんな意味だったはずだ。
この意味だけだと歴史修正主義者自身の、ともとれるが、違う。
過去に死ぬ人物の命を救おうとしている敵がいる。誰かの心を護ろうとしている。誰かの幸せを望む者がいる。もしもの未来を掴むため改変を試みる者がいる。
それを阻止しようとしているのが我らであって…。私たちの言う護衛対象は必ずしもその身を守る対象という訳では無い。
歴史の中で、正しい流れでその命が消えるようにするのも私たちの役目で。
その消える命を見ていても手を差し伸べてはいけなくて。見捨てなければいけなくて。
それは…歴史は…そうあるべきなのだから。
その歴史を変えることこそ歴史修正主義者の目的で、現世に生きる彼等の為の救済である。
なのに、だ。
前回の出陣の時赤井秀一と安室透がセックスしないと出れない部屋的なのにぶち込まれそうになってたり、更にその前の前あたりに媚薬的なの仕込もうとしてたのはナンデダローネー?むしろ活動が活発なのこの類ってどうなんだろうねー?おい答えろや。
これを救済と呼ぶなら、私はもう何も信じない。こんなの絶対おかしいよ。
ねえ、シリアスなのシリアルなの尻アルなの?どれかにしてよ風邪引くわ。
弟なら○○しないと出れない部屋とかデバックする身にもなってさしあげろ、と言うだろう。IT脳である。そして目の付け所がそこになる一般人とのズレに同じ血を感じる。
まずはこの類の歴史改変を目論む歴史修正主義者の捕獲が最優先だろう。比較的発見しやすそうだし、何より目障りだ。
というかこの歴史改変しようとしてるのは複数人なのか同一人物なのか…謎である。
奴らは組織的なものだと思われていたが、そうでもないようだし。まあ、捕まえることに変わりはないのだが。
なにより、救済が目的だと思っていた時は沖矢昴の恋人にでもなれば奴らは元カノである明美さんって人と結ばせたいだろうから躍起になって改変に動くだろうと思い込んでいたのだが、これはこれで何方だとしても動くだろう。恋人カッコカリを選んだのは何者でもない沖矢昴本人なのだが。言い出したのは自分とはいえ、奴はきっと変態か変態の素質がある、たぶん。
複数人と仮定して、派閥とか逆カプコロス派がいるなら是非潰しあってから来て頂きたい。あ、同カプ担当で徒党組むのはやめてね。同担拒否同担コロスの姿勢でお願いします。
ところで安室透って以前私が(社会的に)死んだ喫茶店の店員じゃないか。あのイケメン安室透っていうのか。本名は降谷零と言うらしいが。アムロ・レイとあだ名つけた事を思い出してあながち間違いじゃないのかと思った。私の勘もやや鋭いらしい。近寄らんとこ。
ひとはそれをフラグと呼ぶ。
「こんにちはー!今日はよろしくね。ボクは粟田乱、ランって呼んでね!」
「細川 歌仙。彼女の教育係だよ」
「会うことは無いって言いましたが嘘になりました、白目むきそう」
SL風な見た目に興奮して写真をバシャバシャ撮り、別々に乗り込んだ後のこと。集合場所でもある個室へと入り込んだ我らは協力者である沖矢昴と挨拶を交わしていた。
因みに、ただでさえ生活苦なのに仕事先から経費が下りず、金がないのだと切実に訴えた結果哀れんだのか向こう持ちでタダでチケットが手に入ったのだ。やったぜ、ゴネてみるものだな。そもそも担当が金を出してくれているならばこんな乞食をしなくても済んだのだが。
その際にまず悩んだのは同行者である。
狭い室内だから短刀二人か、短刀脇差ひとりづつか。なのに歌仙が煩くて此方が折れた結果がコレである。結局誰を選んでもめっちゃ目立つわ、とこんのすけに相談した結果御札を渡された。
カラーリング変更できる御札ってなんなんだろ…未来の科学と幻術って、すげー。
小学生並の感想である。今どきの子供の方がもっといい感想を述べるだろうけども。
本体の鞘に貼り付けてみれば、茶髪の美少女(♂)乱ちゃんと黒髪というだけで闇堕ち感のある歌仙の容姿に、あんぐりと口を開けてアホ面を晒したのはついもなにも今朝の出来事だ。ちなみに帯刀しているが一般人には見えていないらしい。やっぱり未来の科学と幻術ってすげー。
現世に合わせて偽名を名乗った二人を見て、沖矢昴も以前私が言った色々と目立つの意味がわかったらしくホォー、と顎に手を当てて呟いている。
パトロンである工藤夫人も乗り込んでいらっしゃるようだが、あちらもあちらの仕事があるので未だ文面のみでの交流しかない。そして今回の任務であえて護衛対象から外れ、宮野志保の護衛を任されているところだ。
夫人に金銭的援助願い出せないかな、と最低な思考に移りかけて、それを本来の任務に対する思考に切り替える。
「今回、私と歌仙は貴方の護衛役として行動します。基本的に貴方の行動を妨げません。動くのは攻め込まれた時、または歴史の改変を試みる動きのあった時のみです」
「ホォー?して、彼女…いや、彼は?」
「ランちゃんは貴方の追う組織のメンバー……バーボンの監視になります」
「あまりに危険では?」
その質問になるのはそうだろう。普通子供でも殺しそうな奴らを相手にこんな危険な任務は任せない。もうどれで呼んでいいのかわからないがバーボンなら誤魔化すかもしれないけれど、だからといって危険である事には変わりない。普通、ならばだけど。
その質問に自信満々に乱ちゃんは答えた。
「大丈夫、ボク見つからない自信あるから」
総合数値で見れば乱藤四郎も五虎退も短刀の中ではthe中間である。総合能力で判断するなら平野、厚、信濃、後藤あたりが適任だろう。
弟から借りているメンバー内で偵察隠蔽だけなら五虎退なのだけれど、敢えて乱ちゃんを連れた理由は彼なら有事に上手く情報を扱ってくれるだろう信頼である。
五虎退を信頼していないわけではなく、得手不得手の問題で。
子供らしく、その反面策略に長けているのはきっと彼だ。だからこそ同行者を決める際に彼は一番最初に決まった。
「そういうことなので。信頼しろとは言いませんが、彼ならやりとげます。万が一があっても貴方には繋がりません」
「わかりました」
「じゃあ、ボクは行くね。お姉さん、ちゃんとインカムしててよ?」
「とーぜん」
手を振り部屋から退室する乱ちゃんに手を振り返して見送れば、妙な沈黙が部屋の中に流れた。
ほぼ待機状態だから仕方ないんだけど、この沈黙が重かった。
とはいえ、それを打開できるほどのコミュニケーション能力が私にはない。
………獅子王も連れてくるべきだったか。後悔も後の祭りである。
乱ちゃんが退室した暫くあと。軽くメモった車内地図に手を翳し、爆発物の監視をする。捜し物は得意だからすぐに見つけられた。っていうか貨物車にいっぱいって…あと別に小型のを持ってる奴…あ、乱ちゃんに追わせた奴が持ってんのね…。
脳裏に浮かぶ淡々と入力されていた情報と現場の情報を照らし合わせ、まだ歴史修正主義者の動きがないことを確認する。よし、今のところ大丈夫だ。
考え事をしていたように見えた沖矢昴が携帯を片手に立ち上がる。
それに倣い、私達も立ち上がった。
向けられる光を反射して向こう側が見えない瞳に向けて、言葉を紡ぐ。
「邪魔はしませんよ、歴史はそうあるのだから」
「お願いしますね、このは。では、後ほど」
視線を外した沖矢昴は歩きだし、部屋を出ていく。その後少しして私達も部屋を出る。
「大丈夫なのかい?1人で行かせて」
「その方が自由に動けるからしゃーなし。それに沖矢昴の携帯を憶えた。別の物に摩り替えた様子もないし、捨てない限り地図があれば居場所は把握できる。最悪あの眼鏡を対象にして探すわ」
歌仙の言葉に地図を見ながら通路を歩いていると沖矢昴の声がする。はやり居場所は確認できた。安心だ。
「来てもらおうか、こちらの領域に」
その一言が聞こえたのち、軽い足音を鳴らして灰原哀、宮野志保が通路を横切っていった。
その一瞬に見えた怯えた表情に沖矢昴さんよ、ちょっとは遠慮してやれよ。と思わなくはないのだけれど。
さて、歴史修正主義者はここに来るのだろうか。