審神者(仮)の黒歴史


今はクソだのクズだの変態の主だのとおもに弟から呼ばれている私だが、こんな私にも純粋無垢な時代はあった。そりゃ生まれた時からこんなノリとか私でも嫌だ。今に関してはもうノーコメントで。
っていうか最後に至ってはあの二振を私に渡したのは弟本人だろう理不尽だ。

話を戻そう。
そう、高校一年生までは確かに純粋だった。
マンガだろうがアニメだろうがドラマだろうが現実だろうが、キスシーンに真っ赤になり、ラブシーンの男女の密着具合に「えっちなのはいけないと思います!」なんて素で思っていたわけだ。どうだ、可愛かろう。あれ、ただの思春期?
そんな私に悲劇が襲う。


それは高校二年生のとき。文化祭の準備中であった。
季節は暦上では秋とはいえ、夏の名残りが色濃く出ていた日のこと。
準備中とはいえ、粗方その日に予定していた範囲まで作り終えたクラスメイト達は部活や帰路につき、教室に残っていたのは少なかったと思う。
教室に残り、帰宅準備をしながら私は友人と話していた。話題の経緯こそ忘れたが、友人の一言が原因だった。

「亀甲縛りにしてやろうか」
「きっこーしばりってなに?」

おかしいだろう?おかしいよな?何故そんなセリフを吐かれたのかも覚えてないが、こんな一言が吐かれたのだぞ?
純粋無垢な私はそれが拘束的なものだとは理解は出来た。しかし、亀甲縛りとはどんなものなのかは知らなかったのだ。
捕縛術のひとつだろうか、そう友人に尋ねた私に友人は笑った。
ああ、あの時はただ笑ったのだと思ったのだ。今にして思えば、ニヤリと意地悪く笑っていたのだが。

「ここをこうして〜…」
「ふんふん」
「ここにこう回して」
「なるほど」

友人によるレクチャーを受けながら赤いビニールテープで身体の自由は奪われていく。ここで思い出して欲しい。
私と友人は準備中の教室で話していて、そこから移動していない。教室にはまだ残っているクラスメイトはいた。そう、クラスメイトの前で亀甲縛りを行われているのだ。
しかし当事者である私はSMプレイにおける最も一般的かつ有名な緊縛様式とは知らない。
恐らくそれは見ていたクラスメイトにも察せられただろう。

赤いビニールテープは縛りきれる程長くは無かったらしく中途半端に終わった事は、不幸中の幸いだったのかもしれない。



はい、黒歴史終わり。



いやはや、しかしまさか…。

「はぁん!ご主人様、上手いよ…!!ご主人様の愛が…んんっ」
「………」

あのレクチャーを受けた経験がここで使われるなんて思わないだろう?
今となっては亀甲貞宗のご褒美として行われるコレもスムーズに出来て、更に行える緊縛様式も増えた。
はぁ、と溜息をついた私は昔の思い出に遠い目をしながら思った。

人生クソだな。