どちらのフラグか


「っていうので良いかな?」

無理矢理作ったような笑顔を貼り付けた大河このはは殺人を隠蔽した犯人の1人だと理解していながらもコナンには痛々しく見えた。







「自主する気は」
「ないよ。したところで意味は無いからね。それよりいいの?そこまで調べたのなら待ったがかかったでしょ」
「…ええ。異常な程の」
「その指示に従った方がいい。余計な問題を抱えかねないから」

何度となく言われたその言葉に何度も答える。
それでも納得しない彼らに、ならばこうだとアウトギリギリにしかならないながらも、こう言えば多少は引くだろうと言葉にした。

「奴の死は予定されていたものなのかは、あちらに帰らなければわからないけれど。もしそうなら問題はないんだよ。歴史上予定された死は覆らない。覆させない。それが私の仕事だ」
「…」
「きみ達からしてみたら、私の仕事はカルト宗教みたいなものかな」
「……」

安室透の目が釣り上がる。ふざけんじゃねぇとばかりに。
私は肩を竦める。もうこれ以上居ても仕方ないと左右に控える亀甲と村正へと視線を向けた。
小さく頷いた2人。村正は私を姫抱きにして、飛び出した。

「三十六計逃げるに如かず」
「待て!!」

人の足と刀剣男士の機動を一緒にされては困る。
馬に乗せねばクソ遅いと有名な石切丸とて、それは比較対象が刀剣男士基準であるからだ。人間と比べれば素早いのだ。石切丸の場合は衣装のせいでもありそうだけど……それを言い出したら戦向きじゃない衣装持ち多かったな、とも思う。
本来なら激しい衝撃を受けるだろうに軽やかな身のこなしで軽い衝撃で済む村正の腕の中に居れば、突然村正が身をよじる。コナンくんの声と共に凄まじい速度で何かが村正の腕を掠り…その何かがぶつかった細い木が折れた。

「…ひぇ」

恐ろしい威力を秘めた…サッカーボールが落ちていくのを見送り、それどころではないと村正の怪我を確認する。怪しい笑みを浮かべながらも苦しげな表情と表示されるステータスに私は青くなった。
中傷…だと?

「範囲固定!ゲート展開!そしてオープン!」

私は慌ててゲートを繋ぎ、私たち3人はゲートを潜り時の政府の施設へと飛んだのだった。
そして
「遅かった……え!軽傷!?中傷!?」
「手入れ部屋貸してぇえええ!!!」
待機していた桜花派の担当に泣きついたのは言うまでもない。






「これは…ひどい……」
刀に戻った村正の手入れを妖精に頼み向き合うように座った私は持参した書類に目を通す桜花派の担当の言葉に頷いた。
「これは今回の件で疑問に思い、こちらで調べた…という体で菊花派に掛け合います。今までよく二振でどうにかしていましたね」
「ウン、ワタシタチガンバッタ」
書類から目を離し、こちらへと言葉を紡ぐ桜花派の担当に私は片言になりながらも答える。弟の刀剣男士借りましたなんて言えねぇわ。
「…あの親子は」
「保護監視下に置かれています。今回の件は歴史上問題はありませんが、貴女は表立ってヒールとして動きました。こちらから出来る術は限られています。…覚悟された方が良いかと」
「それも仕事だ。なにより、加減を間違えたこちらの落ち度だしね」
「……申し訳ない」

巻き込まれたとはいえど探偵たち相手に油断は出来ない。コチラの情報を抜きかねない探偵たちの気を逸らすためだったが、私は全方位からヘイトを買いすぎた。
犯人は遡行軍だと知っていても、私があの親子に恨まれたとして、私は文句は言えまい。
丸くなりかけた背を伸ばし、話題を変えて話を続ける。

「目先の問題としては金銭関係だが、どうにかならないか?あと、他の審神者と連携を取りたい。基本は宛てがわれた任務に徹しているが今回のような事が以降起こらないとも限らない」
「それに関しては私も思うところがあり、現在他の地区担当の審神者様方に確認をとっております。金銭面は…菊花派の出方次第にはなりますが、生活を維持出来るようできるだけコチラからも働きかけます。しかし、見習いでこの戦果は凄いですよ」
「んんっ!?…ごほん、金銭面は有難い。本当に桜花派になりたい……」
「この戦績を見るに…手放す可能性はあまりありませんね」

見習いという言葉に思わず驚いてしまった。菊花派担当は私の事をそう言っていたらしい。いや、たしかに審神者名が名無っていうのもおかしいし、見習いとしておいた方が楽なのだろうけど。回り回って助かるとはいえ、こんな気遣いいらない。
そして本丸の為、弟の為と上げた戦果が自分の首を締めている気がしてどうしたものかと溜息をついた。
エクソダスの難易度が元々高いのに、更に跳ね上がっているんじゃないかと疑心に陥る。

「しかし遡行軍の動きが他の審神者様方が対している敵と比較になりません。どういうことです?」
「ホモカップル作りたいんだって、やっこさん」
「…………えっ?」

まあ、そんな反応にもなりますよね。