人生難易度スーパーハード



二年前、突然自分という存在が消えた。
自分自身がいなくなった訳ではなく、自分という存在が周囲から消えたという方が正しいだろう。
家も、戸籍も、身分証明書も、友人や親類、職場に至るまで全てが、記録が、記憶が消えていた。
とても、悪い夢だ。



その悪い夢は今も続いている………訳では無いけれど。その夢が終わった訳では無い。






私に唯一残ったのは就職してから片手で余る程度に実家に帰省していた弟だけだった。
取り残された私を、情報を得た弟が迎えに来たのは弟以外全て失った日の三日後だった。
真冬だというのによくもまあ公園で三日も生き残れたものだ…。
弟の職業は審神者という神職の知識はあったけれど、それが付喪神を使役して戦い歴史を守るなんて知る由もなかったのは当然だろう。
偽りの歴史から正しい歴史へと戻った際に取り残された我らは弟の本丸での生活しか残らないわけで。
このケースは多くはない割に少なくもない。自分は恵まれている方だけれど、人の不幸など本人にしかわかり得ないのだから何とも言えない。
それなりに受け入れた私を弟は化物を見るような目で見つめていた。

本丸での生活は金はないがその分刀剣男士による日用大工や狩りで飢えることも生活で困ることもない。それに人間…刀剣関係には恵まれており至れり尽くせりである。まあ、一部というか1名除くが正しいか。
主である弟の姉という肩書きも良いものだ。
元々人好きであるらしいのに加え肩書きで良くしてくれる。ファッションセンス皆無、着れりゃなんでもいいやなせいで加州と燭台切と乱ちゃんにはよくdisられるけど格安の古着などを用いてコーディネートしてくれるんだな、これが。
だが大和守、やる気無い格好のときはともかくオシャレ組コーディネートの時もdisんのやめろ、許さんぞ。
それ以上に長谷部は敵だ慈悲はない。
この一部除く良待遇にふんぞり返るなんて真似はしないけども、鍛刀の配合とかイベント代理進行とかしつつ弟のスネかじり虫生活が板についてきたあたりで政府から働けという命令が下された。

現世で歴史修正主義者の働きがないか監視とかマジかよ。