4月1日、エイプリルフールというこの日の正午までは嘘を言っても許されるなんて海外の行事を取り込んだ日本のイベントの日だ。
そんなことを思いながら、私は喫茶店でデートカッコカリをしている沖矢昴に声をかけた。
「ねえ」
「なんでしょう?」
「私、実は既婚者なんだよね」
「浮気ですか」
「間男は昴さんね」
ポンポンと今日はいい天気ですね、みたいなノリで行われる会話だった。
ブラックコーヒーを優雅に飲む沖矢昴と、味が薄くて安っぽい紛い物感溢れるオレンジジュースの入ったコップにさしたストローを吸う私はどう見ても不釣り合いなカップルだろう。実際カップルじゃなくてカッコカリだし。
「それは困りました」
「困った様には見えないけどね」
「で、旦那さんとはいつお別れになるんですか?」
「別れる気はないかなー」
ストローを摘んで弄ればコップの中の氷がカランカランと音をたてる。
離れた席にちらりと蘭ちゃん、園子ちゃん、コナンくんが見えていたので周囲から感じる視線の中に彼女らも含まれているのだろう。
「では僕は捨てられてしまうのでしょうか」
「昴さんの一存で決まるかな」
「なら僕はこのはを手放しませんよ。旦那さんにも渡しません、奪います」
「私ってば愛されてるぅ〜」
にっこりと笑いながら腕を組んでこちらを見る沖矢昴(しかし細目なのか瞑っているのかわからない、どちらなのだろうか)
「……エイプリルフールにつく嘘って意外といいの浮かばないね」
「このはは嘘が苦手ですからね」
「いつか昴さんをギャフンと言わせてみたい」
「ぎゃふん」
「ははー、むかつく〜」
ノリがいい事は喜ばしい事である。だがそういう事じゃねぇんだよ、とイラッとしながら笑った。
コップに残る少量のジュースを飲み終えると沖矢昴は立ち上がる。
「そろそろ行きましょうか。このはの服も買いたいですし」
「買ってくれるの?」
「自分が選んだ服を恋人に着せるのがいいんです」
「昔から女に服を送る事に意味があるって聞いてたけど…んふふ、昴さんスケベか」
「それがお望みなら遠慮なく?」
「私が悪かった、鎮まりたまえ」
「さあ行きましょうか」
「ねえ、しないよね?しないよね?」
慌てて立ち上がり沖矢昴の元へと行けば腰に腕を回され密着される。そのまま「カードで」と片手で会計を済ませた沖矢昴に連れられたまま私達は店を後にする。
エイプリルフールと言えど、あながち嘘は言ってないんだよなぁ…。
