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赤井秀一は後悔していた。
沖矢昴としての行動としては正しかったはずだった。
その結果、余計な荷物が増えたというだけ。




雨に濡れる汚れた小さな少女を発見した少年探偵団と行動していた沖矢は一時的にその少女を保護した。
そこで色々と少女について判明し、周囲の後押しもあり…つまりは外堀を埋められて育てることになってしまった。
あれこれと理由をつけても木馬荘でのことやそもそも理由を聞いていないで押し通される。
果てには有希子の「うちで育てて、定期的に写真を送ってちょうだいね!」という言葉に手放すことも出来ず、特定した少女を管理する店に連絡を入れた。
これは藁にもすがる思いで。
しかし返されたのは非情な言葉だった。

「売れ残りだったのですが逃げ出してしまいまして…よろしければ引き取って育ててあげてください」

と。
これは少女を気にするコナンと毛利親子が目の前にいたのが不味かった。そもそも追い返そうにも見届けるまでは居座ると真剣な目で見つめられていたのもある。

保護した少女は、頭から草花や桜のような木々に咲く花を咲かせ、品種によっては実をつける「花人」と呼ばれる人型の植物に近い生き物だった。
白に近い銀の長髪をファーのような柔らかい髪飾りで2つに結い、暗く、しかし澄んだ青い瞳は星のように小さい光を見せる。コナンよりもやや低い。泥で汚れたニット素材の服も洗ってみれば花人が売り出されている間は統一される色である白。頭には1センチ程のコバルトブルーの4枚花を咲かせている。保護した日は雨に打たれて殆どが落ちてしまっていたのだが、数日もすれば頭に群生させていた。
まさに頭がお花畑である。
しかし、少女の花はやたらと落ちやすく歩けばその衝撃でポロポロと床に花を落としていく。それを掃除するのも面倒だ。
ため息をついた赤井に、軽い足音を立てながら少女は近寄り、見上げている。
購入歴のない花人は純粋で人好きし、笑顔でいる場合が多いというが、彼女はそのケースでありながら無表情。または不安そうな表情しか浮かべない。
そして、その不安そうな表情を浮かべている少女は遠慮がちに赤井のズボンに手を伸ばしかけ…その手を引っ込めた。
「すてないで」
そう言われている気がした。
少女をただ見下ろす赤井と、不安気に見上げる少女が暫く見つめ合い…赤井が視線を逸らす。
視線を逸らした先には少女が落としてきた花が点々とあり、それを指さして赤井は口を開いた。

「片付けてこい」

コクリと頷いた少女が自分の小さな花を小さな手で拾って歩いていく。
その間にもまた頭から花を落としていく少女に、赤井は深くため息をついた。

雲の下の星空