お返事

1月2日にメッセージを送ってくださった
ゆららぎ様へ

初めまして、管理人のシナギと申します。
お正月の貴重なお時間を賜り誠にありがとうございます。楽しんでいただけて、感想までいただけて嬉しいです!

そして誤字の御指摘もありがとうございます!せっかく一気読みしてくださっている最中にお気付きになられると、その語が出てくる度に気になってしまわれたのではないかと思います。申し訳ありませんでした。
ひとまず「確かここで“ガルガンタ”を使ったはず」と自分が憶えていた箇所はすべて修正いたしました。他にも該当箇所があるかもしれませんが、そこは今後気付き次第、適宜修正して参ります。


……以下、余談(かつ見苦しい言い訳)になっております。
読まなくても大丈夫、無問題でございます。


「サイトを作って夢を書いてみよう」と思い立った数年前……改めて『BLEACH』用語を挙げてみると数が多いうえ、常用でない漢字もよく使われています。そこで「間違えないようにちゃんと調べてPCのメモ帳に入力またはコピペしておこう」とそれを実行しました。原作やキャラブックを捲り、.comやアニメ公式さんの文章からもってくるなどし。
そのなかで不肖私、よりにもよって「ガルガンタ」はアニメ公式サイトに(おそらく)ただ一箇所のみ存在していた誤字から引っ張ってきてしまっていたようです。
当時、「こんな漢字(仰る通り漢字が漢字なので)使うっけ?」と疑問も抱いたのですが、その箇所というのがまたもよりにもよってストーリー紹介『Playback』における破面・VS.死神篇にてザエルアポロが「啜れ、邪淫妃(フォルニカラス)」しているすぐ下あたりなのでした。愚にも付かない私の脳はイメージが直結してしまい、抱いた疑問も違和感も彼方へと葬り去ってしまいました。「あんな技を使うザエルアポロや本匠千鶴ちゃん(とんだとばっちり)がいる作品だし、そういうこともあるのかな」と。
今にしたら、「あるのかな、じゃない!そこで止まるな!原作も確認しろ!」と当時の私を叱責したい心持ちであります。だいぶん、意味が異なりますからね。


反省して、二度と忘れないために勉強しました。

【腔】あな。コウ。
医学用語ではクウと読むことが多い。何故だろう……昔のお医者さんが間違えたのが定着したのか?慣用音らしいし、百姓読みならぬ医者読み……?(脱線するのでこれについては下記にて)
月に空と字面が素敵に思えるが部首はツキではなくニク。ニクとカラでなる会意形成文字。
字義は体の中で空洞になっているところ。中国由来の意味では歌の節回しや曲の調子の事もいう(が、ほとんど使われていない)。平成十六年九月に人名漢字に追加された。

おまけ。
小川鼎三の『医学用語の起こり』には、杉田玄白が海外の医学書翻訳の際に腟を造語して“しつ”と読ませようとしたが、形の似ていた膣の字が既にあり、読みも“ちつ”になった、とある。現在では起こりであるはずの腟の方がしばしば異体字とされている。

下記。
私などより遥か先に同じ疑問をお持ちになっていた吉田秀夫氏の努力の結晶たる研究結果(現在でもブログを閲覧することができますので是非)によると、腔の字は飛鳥時代には日本に伝わっており、読みは“コウ”。当時の字義は鹿等の動物の干し肉である。その後は幕末まで日本で腔が使われた形跡は見当たらない。
前野良澤・杉田玄白の『解体新書』より約20年後に出た宇田川玄真(宇田川榛斎)の『和蘭内景医範提綱』に見られるが、それまでの腔とは一線を画して医学用語的であり、氏による造語であると推察される。但し、それでもまた今日の腔の概念と大きく異なっている。腔は元は解剖学用語 Cavum の訳である。

腔の読みを日本解剖学会用語委員が昭和15年〜19年にかけて検討・通知。戦前の衛生兵やその近しい時代にご活躍された先生方の証言から、戦前はコウ、しかし戦後はクウが浸透していった可能性が浮上。昭和3年以前より歯科医学では口腔、“コウクウ”を慣用していた証拠も挙がる。
徹底的にコウとクウの使用時代の境目をお調べになった吉田氏は、『専門書を調べても漢字の読みは解らない、一般向けの本ならルビ(ふりかな)があるかも』『ルビ付きの明治・大正期の医学書は見つかりませんでした』とご自身のブログで嘆いておられる(ここで『このほの外伝一』第ニ話冒頭を思い出す私)。更に方々の大学図書館、国立国会…にも足を運ばれ数多の古い医学書からコウとクウを拾うも、一冊の本の中でもルビは二種類ともまちまちであった。しかしながらクウの割合が高く、やはりクウは間違いではない、と結論を出された。寧ろ“体にある穴”を意味するのであれば、医学書の経緯を鑑みればクウが正しい。決して百姓読みなどではない。

理科の教科書にも目を付けた吉田氏のブログから引用……『内容を見て唖然!、ルビが一切附って無いのです。これだ、是が腔を“くう”と読まずに“こう”と読むようになった原因なのだ。生徒は腔の読みが分からなければ先生に聞く。先生は腔の由来を知らないし、医学とは縁がないから腔の正式な読みも知らないため、漢和辞典の“こう”を生徒に教え、そしてそれが広まる。』
アーッ!嗚呼、こういうことです!こういうことが少しでも減るように、私は世の編纂者さん編集者さん研究者さんを常、応援しております!ね、見坊さん!(またもよぎる外伝一)

……と、様々に先人の成果をありがたく拝読し、とても勉強になりました。腔という字の意味と歴史は深かった。後世に伝えるための記録の大切さ、揺れる言葉の変化の面白さにも改めてふれることができました。


ゆららぎさん、この機会をくださって本当にありがとうございました!ここまでお読みくださっているのか果たして……という長文怪文になり、「そこまでやります?」って引かれてないか心配ですが……国語好きが高じてこんなことになりました。おかげさまで楽しかったです!

本編執筆の続きにもぼちぼち取り掛かろうと思います!


2022/01/03
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