プロローグ
月がよくよく見える晴れの夜は、いつもより一段と気分がいい。
澄んだ風を連れて、飛行魔艇は冬木の空を飛んでいた。
未遠川の上空およそ2500メートルから着水スレスレのところまで急降下してみると、やはり些少の
自動操縦機能や
小一時間に渡って空の旅を満喫した後は、気ままに
さて、これは一見して何の変哲もないカントリー調の木造家屋とガレージだが、常に人
私は魔術の心得がありながら“根源”への関心や探究心は希薄も希薄な異端者であり、何の組織にも属していない
私の曽祖母はイギリス人で、ロンドンではそれは名のある魔術の大家の生まれだったらしい。しかし大層な変わり者で、ロンドンに観光に来ていたという一般の日本人男性と大恋愛し、親族から猛烈に反対されながらも迷うことなく海を渡ったのだという。そんな数奇な系譜で密かに伝えられた魔術は、私にとっては根源へ至るための秘奥などではなく、たとえばいくらか生き易くなる呼吸法のような、面白くて使える裏技であり教養に過ぎない。
長生きだった曾祖母は、
機体の物理的そして魔術的なメンテナンスを終えると、もう空が白んできていた。これはいけない、明日は仲良しのご近所さん宅でお昼をご一緒する約束をしているのだ。あまり遅く起きると手土産のクッキーを焼く暇だってなくなってしまう。そろそろ休むことにしよう。
最後に機体を優しくひと撫でしてから、ガラガラとガレージを閉じたのだった。