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青い花

起きると、顔の周りに鮮やかな青い花が散りばめられていて私は首を傾げた。全く身に覚えがない。昨日寝た時にはこんなもの無かったはずだ。マーリンが夢でも食べに来たのだろうか。

そのあと、自分の口から出てきた青い花を見て、それは私が吐き出したものだと理解した。


時刻は10時。朝ご飯を食べ終わって、いざ種火周回!と腰を上げたところで緊急メンテをするという連絡が入り、今日一日暇になってしまった。

「やれやれ」

急に予定がなくなるということが私は苦手だ。せっかく気合を入れていたというのに、ぷしゅっとそれが抜けてしまう感覚がする。今日は休暇ということにして、トレーニングも勉強もなしにしよう。そう思った私は、暇つぶしに書庫へと向かう。


「けほっ、けほ……はぁ……」

書庫へ向かう途中、急に胃がむかむかして、我慢する間もなく口から吐き出してしまう。だが出てきたのは胃液などではなく、青い花だった。
今朝から青い花を吐くようになってしまった。ドクターに報告すると、「状態異常のようなものみたいだけど見たことがない症状だ。経過を見て今後の対策をしよう」ということに。
だが私はこれに見覚えがある。同人誌で見た……つまりは刑部姫の本棚から適当に取った薄い本のテーマがこれだった。片思いを拗らせると花を吐き、両思いになれたら白い花を吐いて完治する、というものだ。なんて厄介な病気なんだろうか。

息を整えてから青い花を拾い集める。片手に収まる程度の量なので、握りつぶしてゴミ箱まで持っていくことができる。誰にもバレない、はずだったのだが。

「それは花吐き病というやつか」

頭上から降ってきた低音は、それに似つかわしくない小さな革靴を履いていた。

「知ってるのアンデルセン」
「ああ、現代の創作の知識も多少は所有しているからな」
「なんでこんなのにかかっちゃったんだろう」
「昨日の戦闘でスペルブックの攻撃をまともに受けたからじゃないか?」

昨日、スペルブックから放たれた光球を避けることが出来ず、顔面で受けてしまったのだ。ドッジボールのそれと同じでとても痛かったが、赤くなっただけで傷ひとつなかったから今の今まで忘れていた。

「それか……」
「それで、そいつは治さないのか?それとも治し方を知らないのか?」
「知ってるよ、でも振られたらどうするのさ。だから他に治す方法がないかなって考えてるんだけどね」
「ふむ。俺の方でも調べておこう」
「ありがとうアンデルセン。……あの、ところで聞いておきたいことが一つあって」
「なんだ?」

「私の好きな人って誰?」
「何?」

それが一番の問題だった。


2018/6/2



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