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優しくしないで

早朝の空気、肌寒さ、青みがかった景色が、部活で家を早く出ていたあの日々と重なって、僅かに踏み出す足が止まる。
それにすら、天草は気付いてしまう。
「……マスター?」
「なんでもない」
「本当に?大丈夫ですか?」
「大丈夫だってば」
言及されなければ耐えられたことかもしれないのに。胸を掻き毟りたくなるような、そんな衝動に襲われて、その場で蹲った。
気分が悪いんですか、と優しく背中をさすられる。ああ、気分が悪いのかもしれない。貧血の時みたいに眩暈がして、喉の奥から何かが出てきそうだった。
天草ではない誰かの声も聞こえる。他のみんなにも気付かれたみたいだ。
やってしまった。いつもなら我慢できたはずなのだ。この程度のフラッシュバックは。今日はたまたま、違和感に気付いた人物がいたから。
ーー私は人に優しくされるとダメなのだ。


2019/2/2



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