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ルルハワ最終日

※独自解釈


長い長い夏休みが終わる。
何度も繰り返した一週間は、長いようで短かった。明日にはもう帰る予定だ。

ぐっすり眠っているみんなに気付かれないようにホテルから抜け出し、砂浜で夜空を一人眺めていた。
波をあまり立てない海が私のふくらはぎを濡らす。
「何をしているんですか?」
振り返ると、天草が立っていた。気配遮断なんて使えないはずなのに。全く気がつかなかった。
「感傷に浸ってるんだよ」
水平線へ視線を戻すと、隣に天草が並ぶ。
水着霊衣がない天草は第二再臨の服装なのだが、ブーツがしっかりと水に浸かってしまっている。気持ち悪くないんだろうか。
「満ち潮なので危ないですよ」
「天草がいるから大丈夫だね」
返答がないから隣を見上げると、困ったような顔をしていた。
「天草、毎回来てくれてありがとう」
「?……何の話でしょう」
「こっちの話。天草はサークル参加してなかったの?」
「はい。文才はありませんので」
「あったら参加してた?」
「いえ……していないでしょうね。金時さんたちと観光をする予定でしたので」
水位は膝まできていたが、天草は一歩も動かなかった。
「私ね、君がサークル参加してないの、嬉しかったんだ」
「……ライバルが減って、ですか?」
「ううん。君が聖杯を勝ち取ろうとしていないから、だよ。約束守ってくれてるんだよね。ありがとう」
「おや。信頼されていなかったんですね」
「違うよ。信頼はしてたけど、形にされて漸く実感したってこと」
一歩前へ踏み出すと、躊躇いなく腕が掴まれた。
「どこへ行くつもりですか」
「悪いんだけど、君の願いが叶うのはずっと先になりそうなんだ」
「それは承知の上です」
「きっとこれはBBちゃんが見せた夢なんだよ」
「?話が見えませんが……」
「アナスタシア知ってる?」
「ええ。私も彼女に頼まれ、一緒に写真を撮りました」
「彼女がここにいるのはおかしいんだよ」
「なぜ、」
「センパイ」

砂浜にBBちゃんが立っていた。
水に濡れない位置からこちらを見下ろしている。
「早くホテルへ戻って眠らないと、帰れなくなっちゃいますよ?」
「そうだね」
天草が腕を離す気配がなかったから、そのまま引っ張って陸へ進む。
「マスター、どういうことですか」
「びしゃびしゃになっちゃったね。ごめん天草」
「そんなことはどうでもいいんです」
「天草も早く寝なよ?」
「マスター、」
「おやすみ。ばいばい」
無理矢理腕を引き離して、走る。
水を含んだサンダルがかぽかぽと音を鳴らして、心臓の音と同じように騒がしい。

「BBさん」
「私、なーんでも知ってますが、何を聞かれてもノーコメントです。それより、早く眠っちゃてください」
「は、」
目が合った。その目の奥の、何者かと。
脳が揺れて、平衡感覚を失い、砂浜へ倒れ込む。
「これで最後でしょうか。さて、次にマスターさんに会える日まで、バッドエンドを迎えていなければいいんですがねぇ」


2019/6/9



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