エミヤごはん
エミヤはきっと、辿ってきた道が違えばプロの料理人になれただろう。
ただのじゃがバターをこんなに美味しくできる人間がいるだろうか?ほくほくのじゃがいもはうっすらと塩味がついていて、それに絡む溶けたバターが滑らかな舌触りを生み、甘さとしょっぱさが上手く融合していた。
ほくほくと隣で頬を高揚させながら同じくじゃがバターを食べている天草は、普段の胡散臭さなど一切なくただの少年に見えて微笑ましく映る。
「なんでしょう?」
不躾だと言いたげな瞳にはしかし鋭さはなく、それがじゃがバターのおかげだということを知っている私はおかしく笑う。
「美味しそうに食べるから」
指摘されて表情が緩んでいることに気が付いたのか、汚れていない口元をハンカチで拭った天草は、こほんとわざとらしく咳払いをした。それでもまだ少し残っているじゃがバターを視界に入れると目が輝いている。可愛い、と思ってまたくすくす笑うと、じとりと睨まれてしまう。
「見つめられると食べ辛いです」
不貞腐れたように呟いてから残りのじゃがバターを口に運ぶ。自然に上がっている口角には気付いているのだろうか。
2018/4/25
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