高校一年 07/30(水)
メシも風呂も終わってあとは寝るだけ。このタイミングで合宿で一番嫌いなモン、片付けっちゅー敵が立ちはだかる。
「ちょっと〜ユウくんも謙也くんも真面目に片付けなさいよ〜」
「あかん…こない場所に布団敷いてあるんが悪い…」
「せやせや!」
今日着た汚いTシャツも風呂で使ったタオルもぐちゃぐちゃにエナメルの上に積み上げとって、気分が萎える。かろうじて中に入っとる明日からのTシャツはまだ綺麗やろうけど。横で謙也も同じような感じで、二人してすでに敷いてある布団にねっころがった。せやけど、バイブルと天使(小春)はそないなことあらへん訳で。タオルはちゃんと干しとるし、使用済みTシャツ用の袋も用意してあって、ほんま尊敬する。
「ユウジ、はよ片さな早苗呼べへんのやけど。」
「べつにいつもこんな感じやろ。もうええよ呼んで。」
「あ、ほな呼ぶわ。」
大の字でねっころがった俺の横に立って白石は携帯をいじっとった。合宿二日目の夜には、毎年恒例のスマブラ大会っちゅーモンがあって(機械は謙也が持ってくんねん)、毎年白石の部屋に集合。去年は財前も金ちゃんもおって最高に楽しかったんやけど。今年はなあ…
「せやで、ユウくん!今年は舞ちゃんもおるんやで?汚いままでええん?」
「…あ。」
むくりと上半身起こす。視界に入る汚い荷物の山。あれ?これ、弥栄にも見られるんか?
「…あかん。」
「やろ?ほな、はよ片さなあかんなあ?」
「……おん。」
深い深いため息をついて片付けに取り付く。さすがに、こない汚いとこ見せられんわ。布団に座って泥だらけのTシャツを指先でつまんでは、落とす。全く進まない片付けに再びため息をつくと、腰辺りのTシャツをつんつん引っ張られた。
「えーユウジ片付けるん?」
「しゃあないやろ?ほれ、ケンヤもはよ片付けんかい」
「やー俺片付けは最終日にする派やねん…」
「あーあ財前がおったらなー」
「あ、白石!枕投げしようや!な?な?」
無視か。俺の隣で枕を抱き抱えて、それをバシバシ叩き始めた。くそ、むかつく。俺は黙ってひたすら片付けやのに(全く進んでへんけど)。
「なー白石ー!」
「金ちゃんみたいなこと言わんの。」
「白石白石白石ー!」
突然、ばしん、と背後で音がして、慌てて振り向くと白石の顔に枕が直撃しとる。思わぬ状況に、「ぶっ」と噴き出してもうて、すると「ふふふ」と黒い笑い声を出しながら白石は枕を装備した。
「覚悟しいっ!」
「ふぎゃっ」
謙也きしょい。白石の投げた枕は謙也に直撃して、変な声が上がる。そして、そのまま落ちた枕が俺の荷物に直撃。
「あー!!キサマ!何してくれとんじゃ!死なす!」
荷物を崩した枕を掴み取り、謙也に投げ返す。至近距離やったから三度くらいバシバシ叩いたった。
「いい痛い痛い痛いっちゅーねん!」
「謙也、覚悟!」
白石も自分の枕を拾い上げて謙也に向かって投げた。
「ふ、二人がかりなんて卑怯やろ!」
不本意ながら三人で枕投げが勃発してもうて。笑い声が響く中で、俺の脳内から色んなモンが吹き飛んで。けど、
「蔵…来たんやけど…」
部屋に入ってきよった人影に、枕を持ったまま俺らの動きが止まった。サーと血の気が引く。襖が開いた思たら、早苗と弥栄の姿があってん。
「あ、一氏くん」
あかん!!枕を謙也に投げ飛ばして、慌てて散らばってた荷物を鞄に押し込んだ。