高校一年 08/01(金)
「なぁ!日曜に近くの神社で祭あるんやて!皆で行かへん!?」
午後練の休憩時間。コート外の日陰のベンチに集まって、皆でグダグタしとった時や。謙也の発言に飲んどったドリンク全部噴き出してもうた。
「一氏ィ!汚い液体こっち飛ばすなハゲ!」
「ちょ、ひどない?小春ぅ…」
あからさまに「汚い!」っちゅー顔して。ほんま傷付くわ。傷付くけども。
「な!祭!屋台出るんやて!」
「楽しそうやな」
「ほな、皆で行きまひょか」
あかん。こない展開全く予想してへんかった。けど、よう考えればホテルの廊下に普通に貼ってあるし、気付かんはずがないわな。何を血迷ったか、昨日誘った自分をシバきに行きたなった。このまま謙也がアホ面で誘いに行ってもうて、何も知らへん弥栄が「一氏くんと行く約束してるの」とか言ってもうたら終いや。早苗にも小春にも腹抱えて爆笑される気がすんねん。それだけは阻止せな!
(あかんあかんあかーん!)
「…ユウジ?なに唸っとるん?」
「白石…、せや!お前早苗と二人で行くんやないんか?」
「二人?そないな話してへんけど?」
思わずガクリと肩を落とす。あー昨日誘わんべきやったな。どないしよ。とりあえず謙也が意気揚々と二人を誘う前に会って口裏合わせてもらわな、俺がめっさ恥かくことになんねんな。何とかせな、って考えた矢先。
「あっ、舞ちゃーん!早苗ー!」
近くを通った二人を呼び寄せる謙也に本気で殺意を抱いた。「なにー?」って呑気に近付く早苗と弥栄。頼む、こっちくんな。けどその願いは呆気なく打ち砕かれる訳や。
「明日、祭あるんやて!みんなで行こうっちゅー話や!」
思わず頭を抱え込む。頼む!余計なことは言わんといてや!
「ええね!行きたいわ!」
「えっと……うん。」
弥栄は何も言わへんかった。忘れたん?って一瞬思たけど、顔上げると少しだけ寂しげな横顔が視界に入って、俺もなぜか胸が痛んだ。そない表情、もしかして楽しみにしててくれたん?って調子乗ってまうわ。
「明日楽しみやなー」
「せやな、舞っ」
テンションが上がり気味の謙也と早苗の隣で、曖昧に微笑んどった。なんや、罪悪感。ちゃんと弥栄と行くからって言えばよかったんか。無理や。俺にはそんなん言えへん。
「さて、そろそろ時間やな。」
白石がラケットを手にベンチから立ち上がって、ぞろぞろとコートに向かう。貴重な休憩時間やったのに、謙也のせいでろくに休めんかったわ。って毒づいても、俺の精神的疲労がとれる訳やない。よっこらしょ言うて重い腰を持ち上げた。
「あ、あの一氏くんっ」
ちょこちょことこっちに歩み寄る。不安げに見上げてくる姿に、なんやくすぐったなった。別に二人で行きたかった訳やない。弥栄が喜んでくれたらそれでええんちゃうかっちゅー昨日の考えが頭に浮かんだ。
「あー…謙也が、皆で行ことか言い出しよって。」
「…そっか。」
弥栄は、しょうがないね、って寂しげに笑った。痛い。めっさ痛いねん。なんちゅーか、精神的に。
「じゃ、じゃあ練習頑張ってね、」
「あ、おい!」
慌てて引き止めたかったのに、掴もうとした手は掠ることもなく。延ばした手は宙を掴むだけやった。思とったよりも俺もがっかりしとるんやろか。下ろした手を見てそないなことを考えた。思とったよりも、本当は二人で行きたかったんやろか。まあ、今更どうしようもないんやけどな。けど想像以上に、俺は楽しみにしとったみたいや。