高校一年 04/07(月)


彼が頑張ってって言ってくれたから、頑張ろうと思えた。次会うときは、変わった自分でありたかった。わたしが変わろうと思えたのは彼のおかげなのに、彼は決まって、俺のおかげじゃなくてそれは弥栄が自分で決めたことだから、って言ってくれた。大好きな人が、わたしに変わるきっかけをくれたの。


でも、やっぱりこわい。もうすぐ回ってくる自己紹介に緊張し過ぎて手が汗ばんだ。今、ちょうどいちしくんが話している。


「一氏ユウジ!浪速のモノマネ王子っちゅーのは俺のことや!」


一気にクラス中に笑いが起こった。きっと誰かのモノマネをしたのだろうけど、あいにくわたしには分からなかった。それより何より、いちしくんじゃなかったんだ。恥ずかしい。誰にも言わなくてよかった。ひとうじくん、か。


「趣味はモノマネ。特技もモノマネ。朝起きて一番にするんはモノマネ。夜寝る前もモノマネ。」
「自分テニス部やんけ!」


クラスの男の子の声で更に笑い声が増える。隣の女の子がその前の席の子とお腹を抱えて笑っていた。でもやっぱりわたしには笑えない。どうしよう。ノリが分からないよ…


「そうやで!1組の小春は俺と相思相愛やから、狙わんと・い・て。っちゅーことで、一氏ユウジでしたー。」


再び沸き上がる笑い声。そしてみんなの拍手と同時に一氏くんは座った。小春ちゃん、一氏くんと仲良しなんだぁ。だからわたし、睨まれちゃったのかな。ふと視線をそらすと、窓際のショートカットの女の子が笑っていなかった。こんなにみんな笑ってるのに。あの子も他の地方から来たのかな。話し掛けられるかな、なんて淡い希望を抱くと、自己紹介が回ってきた。


「ははは初めまして!弥栄舞です!」


一氏くんだけじゃなくて、一応みんな笑いをとれていたから、こんなにシラけた空気が流れるのは始めてだった。うわぁ、泣きそう。確かにみんながみんな関西弁で、標準語はわたしだけだった。きっとみんな四天宝寺中学校出身なんだろうなぁ。だから内輪ネタが多くて入っていけないんだ…


「ど、どうぞよろしく…」


わたしはすぐに座った。だって居たたまれない。教室のどこかで、今の子見たことあるー?とか、知らない子がおるーとか、言われている。せっかく一年生から入ったのに、これじゃあ気分は転校生だよ。悲しくなった。その時、手を叩く音がしたの。たった一人の拍手は音が疎らで、寂しいものだったけど。斜め後ろの方を見ると、一氏くんが無表情で手を叩いていた。そして次第に拍手をくれる人が増えていって、それはクラス中に広まった。


「ほれ次やで次!」


一氏くんがそう言うと、わたしの後ろの席の子が立ち上がった。助かった…。泣きそう。いや、泣かないけど。一氏くんが助けてくれたっていうのが、凄くうれしかった。