高校一年 04/11(金)
教壇の上で、と言うか黒板付近で固まってる男の子たち。その中心で一氏くんがモノマネを披露していて、笑い声で溢れていた。それを早苗ちゃんは傍らで欝陶しそうに眺めていた。
「あーうっさいわ。」
「早苗ちゃん…今思ったんだけどね、一氏くんのアレってヘアバンドだったの?バンダナだと思ってたら後ろに結び目なかった…!」
頭についている緑色のアレ、を指差してわたしが言うと、早苗ちゃんはニヤニヤ〜って笑った。なんや、気になんの?って言われたけど、勝手にバンダナだと思い込んで勘違いしてたら申し訳ないなぁって思ったから気になると答えた。そしたら興ざめしたように、机に頬づえをついて、本人に聞けと言われてしまった。けどわたしが話し掛けたところできっと一氏くんは睨みながら、うっといねんって言うと思うから小心者のわたしにはちょっと無理だ。諦めよう。と言うか、どうして掃除も終わって放課後だと言うのに教室がこんなに混んでいるんだろう。
「さぁーって、そろそろ時間や!早苗行くでー」
わたしには絶対見せないような意気揚々とした表情で一氏くんがやって来た。もちろん早苗ちゃん目当てだったけど。ちくんと痛んだ胸に気づかない振りをして、早苗ちゃんを見た。
「どこ行くの?」
「今からユウジのモノマネLIVEやねん。それが終わってから部活。ほな行くで。」
モノマネLIVE?一氏くん、そんなのまでやっちゃうんだ。と敬意を篭めた視線を送ったら少しだけ、本当に少しだけ照れたように頭を掻いていた。そのバンダナだかヘアバンドだか分からないものをいじっている。なんだか、胸がほわんってあたたかくなった気がした。
「ユウジ、遅れるで?」
早苗ちゃんがすでに教室のドアのところにいた。一氏くんも行っちゃうんだ。テニス部も今日から本格的に部活が始まるから、わたしはそのライブとやらを待っていようと席に座ったまま、がんばってね、と一氏くんに言うと、ぺしっと頭を叩かれた。いい痛い。これ二回目だよ。思わず両手で叩かれたところを押さえた。恐る恐る一氏くんを見上げれば、ものすごい不機嫌でわたしを見下ろしている。
「何言うとんねん!はよ来いや!」
「え」
「みんな待たしてるやんか!はよしい!」
「えっ…あの、ちチケットとかは…」
「ハァ?んなもん要るわけないやろアホか!」
「わわたし、行ってもいいのでしょうか…?」
「はよ来い言うてるやろ!おまえのその耳はなんや!飾りか?ちぎって刻んで焼却炉に放り込んだろか!死なすど!」
ぽかんと口が開く。閉じない。まくし立てるように言って、すたすたと一氏くんは教室から出て行った。相変わらず口が悪い。のだけども、でも嬉しい。一氏くんが、わたしも行っていいって。教室の時計を見ると、15時27分。
「舞ー、はよしいや。半からやで。」
わたしは慌てて立ち上がった。そしてドアのところで待っていてくれた早苗ちゃんに駆け寄る。どうやら一氏くんは先に行ってしまったようだ。仕方ない。と言うか申し訳ない。こんな時間ぎりぎりまでわたしの戯れ事に付き合わせてしまって。
けど、すごくうれしかった。わたしも行っていいんだって。わたしのこと大嫌いなはずなのに。一氏くんは口も目付きも悪いのに、どうしてあんなに優しさで溢れてるんだろう。憧れる。
そのあと、早苗ちゃんに顔緩んでるでとつっこまれたのは言うまでもない。