高校一年 06/19(木)
「ユウジ、元気あらへんねー?」
梅雨はまだ明けてへんけど、曇りが何日か続いて、お預けをくらっとったテニスもそろそろ出来る。昼休みも屋上使えとるし、元気はあるはず。けど最近はもうずっと、溜め息とかそんなんで毎日がじめじめしとった。久しぶりにカラッと晴れたのに、俺はやっぱり変わらんかった。
「ここ最近ずっとやない?」
早苗はあれ以来ちゃんと友達をやっとってくれとる。白石とやってもう気まずさのカケラもないし。なのに心が晴れへんのは、やっぱり弥栄の…。ちゅーか、こいつらは何も聞いてへんのか?早苗やって、初めての女友達やったんやないん?
「あれ、舞ちゃんは?」
その名前に敏感になっとる気がする。小春の問い掛けに俺は無言で弁当をつつく。早苗が「今日は図書委員やってー」と何事もあらへんように答えとった。やったら、今がチャンスなんやないんか?本人には聞けへんもん。
「なぁ、弥栄って…転校するん?」
どうでもええ感じで、俺には関係あらへんっちゅー顔して、小さくそう聞いてみた。早苗は「何それ、冗談やろ?」って笑い飛ばすと思ったんや。けど、そうやなかった。俺が本人から聞いた時みたいに、その場におったみんなが動きを止めた。
「…え?」
みんな何言うてるん?っちゅー顔しとる。早苗なんて、めっちゃ顔青くしとるし。
「な、何それ、」
弥栄はみんなには言うてへんのか?なんちゅーか、一瞬だけ優越感を感じたけど、すぐ絶望感に変わった。ほんまかどうか分からんやん。別に弥栄がいてへんようなるんはええけど、早苗が元気なくすんは……ほんまに、弥栄が東京戻ってもええん?前の俺なら、迷うことなく「はよ東京行け」とか言えたんやろうけど…。今はなんでか言えへんな。
「ユウくん、それほんまなん?」
「俺は…本人から聞いたで。」
確かにあの日、東京戻る言うた。聞き間違いちゃうやろ?俺やって、信じられへんもん。小春は隣で神妙な顔つきで、「なるほど。」と呟いとった。何がなるほどやねん。全然納得できへんわ。
「それでユウくん、そないに元気あらへんのね。」
「は、はぁっ!?」
んな訳あるかい。あない女に俺の元気奪われてたまるかっちゅーねん。「ちゃうけど。」って否定しても、小春はニヤニヤしとるだけやった。
「小春はええん?弥栄さんが東京行ってもうても。」
「やってアタシは今までやって毎年会っとったし。昔に戻るだけやもん。」
せや。小春は幼なじみとまではいかんでも昔から弥栄とは仲良うしとったみたいやし。
「早苗、大丈夫か?」
さっきから非常につらそうにしとる。早苗にとって、弥栄はやっぱり特別な存在なんやろ?なんで俺にだけ言うたんやろ。弥栄にとっての早苗やって、特別なんやないん?あいつが何を考えとるんか全然分からんし、いついてへんようなるかも分からん。知っとったのは俺だけやったのに、俺には何もできへんかった。