「まーしーらーおっ!」
「う、うわぁ!」


学校からの帰り道、よく知ったフサフサの尻尾を見つけた。そっと気づかれないように忍び足で近づき勢いよく抱きつけば、意外と筋肉質なソレはビクッと震えた。


「なまえ、か…いつも言ってるだろ。驚かせるなよ……」
「だーって猿夫の反応って面白いんだもん!やめられない!」
「はぁ…」
「ため息つくと幸せ逃げちゃうぞ!」
「誰のせいだと思ってるの」
「猿夫」
「違う!なまえのせいだから」


私がいきなり飛びつくのはいつものことなので、抱きついたままの姿勢で歩き始める。やれやれと呆れたような表情を浮かべながらも、しっかりと私の歩調に合わせてくれるところにキュンとしてしまう。この自称フツメンの優男め。私をドキドキさせやがって…!
なんだか悔しくなって頭を猿夫の背中に押しつける。ぐりぐりって音がなりそうなくらい強く。


「い、いいい痛い痛い。なまえ痛いだろ……え、どうした?」


抱きつけばよく分かる。以前よりも鍛えられた身体。もともと高かった身長もさらに伸びて、いつのまにか見上げるようになった。猿夫が成長し、ヒーローの夢に近づくにつれて出来るこの差が、私を置いていってしまうような錯覚に陥れる。猿夫が私を置いていくはずないと分かっていても、いつも一緒にいた私にとってこの差はとても大きなものに感じた。
その不安が伝わったのか。猿夫は私の頭をグシャグシャと乱暴に撫でてきた。


「……髪の毛がボザボサになっちゃうよ」
「じゃあ、離れて」
「やだ」
「ならこのままだよ」


猿夫はすごい。優しい言葉をかけられたわけでもないのにさっきの不安が嘘のようにとけていく。雑に撫でてくるのは昔から。その雑さが気にするな、と言ってくれてるようで不思議と心が軽くなる。


「……ありがと」


小さくお礼を言えば「どうしまして」のかわりにポンポンと軽く頭を叩かれる。元気充電完了の合図だ。満タンになった証拠に顔が晴れる。うふふ、思わず漏れた声とともに上を向けば、微笑む猿夫。……元気になったついでにひとついいか。貴様、全然フツメンじゃねーぞ。イケメンだぞ。


「……おし。ましらお様や。この私にアイスを恵んでくれんかねェ」
「なにナチュラルに奢らせようとしてるの」
「いや全然ナチュラルじゃないよ。めちゃくちゃ奢らせようとしてる」
「それもっとダメなやつ。買わないからね」
「猿夫のケチ〜」
「はいはい。コンビニ寄る?」
「え、うそ……奢ってくれるの!? 優しい!!」
「違う。奢らない。そうじゃなくて自分で買いなよ」
「なにその上げて落とす戦法…いいよ大丈夫。猿夫に奢らせたかっただけだから」
「それ、尚更ダメだろ」


私ばっかりドキドキしてるなんて、やっぱり悔しいんだから。いつか絶対奢らせてやる。


抱きついてみた
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