「おう、大宮」
「や、伏見」
講義開始30分前に教室に着くとちらほらと学生がもう座っていて、その中には伏見の姿もあった。
「早いね」
「一本早い電車に乗れたんだ」
「そっか。あ、伏見お誕生日おめでとう」
他愛ない会話を区切り唐突に祝いの言葉を投げかけつつ袋から先ほど買ったお菓子の箱を出した。
「知ってたのか?ありがとう」
「突然思い出した。本当は君が来る前に箱にメッセージでも書こうかと思ったけど失敗したな」
「知っていてくれてただけ十分だ」
大きな身体とはギャップがある笑顔を浮かべながら、ありがとうと伝えられてなんだか申し訳なくなる。そんな安いお菓子で喜んでくれるとは。
「大宮の誕生日はもう終わってたよな」
「へ?あ、ああそうだね」
「じゃあ来年お返しするから楽しみにしててくれ」
「いやー、来年はお互い卒業してるからね。
ま、期待せずに待ってるわ」
あははって笑って伏見を見たら、思いがけず真剣な顔をしてこちらを見ていて思わず押し黙る。
え、変なこと言った?
「…伏見?」
「…いや。そうか、来年は卒業してるな。
でも、俺は来年も大宮と定期的に会うような関係になりたい」
沈黙。これをわざわざ真面目な感じで伝えてくるということは…
「えーと、それは友人として的な感じではなく?」
「その先を見据えた関係で頼む」
撃沈。伏見にしては珍しく眉間にしわを寄せ、頬を赤らめながらそんなことを言われては、私のそちら方面に疎い頭でも理解できてしまう。
「前向きに検討します…」
「それ、体良く断るときの言葉じゃないか?」
「え、あ、違」
「まあ、これから卒業までにその気にさせてやるから覚悟しといてくれ」
そう言って笑う伏見の手に陥落するのはすぐのことだった。
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