FRAMEの木村龍は今日もアンラッキーであった。
朝にコンビニで買ったコーヒーをいきなり落とし、そのうえズボンにかかる。
事務所に着いて扉を開けると山村が掃除をしていて床が濡れているのに気が付かず、滑って転び。
そして日が傾いた頃だった。
龍は事務所で打ち合わせを終え帰ろうとした時、突然風が吹いて龍の資料だけが窓から飛んで行った。
「木村さん、大丈夫ですか。さっきの書類コピーしましょうか」
「大丈夫です、プロデューサーさん。多分外に落ちてると思うんで、とってきます。」
龍は書類が落ちたであろう事務所の近くの路地へと足を進めた。
窓から飛んだ方向の先には路地があった。その路地へ入ると女性がうずくまっていた。
顔が見えないがうずくまっているということは何かあったのだろうとおもった龍は一大事かもしれないと急いで声をかけた。
「大丈夫ですか!!」
駆け寄ろうとした龍は足がもつれてすってんころりと転んでしまった。
うずくまっていた女性が振り向くとその顔は龍も知っている人物のものだった。
「名前さん!?」
「こんにちは、木村くん。大丈夫?」
「す、すみません。ありがとうございます。」
いつも通りの穏やかな笑顔を見せた名前に龍は安心する。
しかし、なぜこんなところでしゃがんでいるのだ?という疑問が浮き上がる。
それに答えるように名前は話し出した。
「黒猫がいつもここにいるんだ。よく見に来てたんだけど。今日はいないみたい。」
「そうなんですね。黒猫がいるなんて知りませんでした。」
「あ、そういえば」
名前は手に持っていた紙を龍へと差し出した。
「さっきこれが落ちてきたよ。」
その紙はさっき龍が窓から落としてしまった資料だった。
「それにしても、相変わらずアンラッキーぶりだね。」
「今日も朝から不幸続きで、英雄さんや信玄さん…プロデューサーさんにも本当に迷惑かけてばっかで…俺、アイドルとして向いてないのかなって。」
「いやぁ、私は木村君にアイドルは向いていると思うよ。」
そう言われ龍は顔を上げる。
「だって木村君。いつだって人の為に頑張ってるし色んな人を笑顔にしてる。」
「笑顔に?」
「そうじゃなかったらこの前のライブに来てるファンのみんながあんなに幸せそうな顔してないもの。」
「え、名前さんこの間のライブに来てたんですか。」
「偵察ですけどね。いやぁすごかったな〜あのトロッコ。参考になりました。」
名前は龍に敬礼をする。
龍は名前に褒められ素直に嬉しいと思った。
「それでも心もとなさそうな木村君に…」
ふふっと名前は笑いスーツのポケットから何かを出した。
「はい、これ」
「お守り?」
「この間ロケで行った神社で何個かお守り買ったんだ。アンラッキーな木村君にはこれを献上させていただこう。元気出してね。」
そういって名前はじゃあと言って立ち去って行った。
龍は嵐のような人だなと笑う。
「龍、資料見つかったか?」
路地裏に立ち尽くしていた龍の後ろ姿に英雄と信玄は声をかける。
「あぁ見つかったのですが、さっきまで、名前さんがいて…。」
龍の手元にあるものを差し出した。
「お守りか?」
「何のお守りだ?」
龍の手をひらくと…。
「「『安産祈願』」」
三人は苦笑した。