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-214:50:29



冬木市新都―――苗字邸

私は本家の調査員から送られてきた聖杯戦争参加者の資料をみて頭を抱えていた。

「すでにランサーのクラスは召喚されている?」

私は先刻ランサーのクラスのサーヴァントを召喚した。
イーリアスにも描かれるギリシャの戦士ーアキレウス。
クラスとしてはライダーのほうが近いと思われるが今回はランサーで召喚された。
宝具はAクラス、俊足の英雄・・・最強と言っても過言ではないサーヴァントだった。
ただ問題なのは、聖杯戦争の参加者は7人。だが私が召喚したことによって8人の参加者が存在することになった。
今までの聖杯戦争で一度もその例外は無かった。

この聖杯戦争何かがおかしい。

そのことを今考えても答えはおそらく出ないだろうと考えるのをやめ目の前の自分のサーヴァントに視線を向けた。


「あんた本当に魔術師か?」
「ん?」
「いや、魔術師ってもっとこう・・・お堅いイメージがあるんだが」

そう言われて召喚してすぐのことを思い出した。
アキレウスが現れた時、私は思わずはしゃいでしまった。

「アキレウス!!あの有名な!!それにしても目の保養だね!」

自分でも相当痛いと思う。アキレウスも怪訝な表情だった気がする。
美丈夫を目の前に冷静でいられなかった私は魔術師かと疑問を持たれるのも仕方ない。
殺伐とした聖杯戦争の中美丈夫を愛でるくらいの楽しみは欲しいよとちょっと思っているが心のうちに隠しておく。
それに私が今ソファーに寝そべってお菓子を食べながらいる姿もちょっとお行儀悪い。確かに人と話すときの姿勢では無い。体を少し起こして普通の姿勢に戻した。



「そういえば私の自己紹介をしていなかったね。私は苗字名前。苗字家は日本の魔術師でそこの10代目の嫡子が私。今回聖杯戦争に参加するのは一族に聖杯を持って帰るため代表として参加しました。魔術は基本的なものなら大体使えます。」

一応魔術師であると説明したが威厳は完全にない。
元からないから仕方ないけどね・・・と心の中で卑下した。

「聖杯を持って帰ってその後はどうするんだ。」
「まぁ頭首たちに任せる。たぶん魔術師の悲願である”根元への到達”に聖杯を使うんだろうね。」

そのために先代も聖杯戦争に参加したらしい。だが一度も持ち帰ったものはいない。
それを実現するため今回は私が参加することになった。

「あんた自身の願いは無いのか?」

その質問に一瞬言葉が出なかった。
自身の願いはあった。昔のことだ。

「そうね。もう無いかな」

そういった私はいつも通りの表情ができていただろうか。
アキレウスは考えるようなそぶりを見せ軽快な口調で話した。

「とりあえず、あんたの指示には従うぜ、だが俺がやりたくないことはしない。させたいのなら令呪でも使うんだな。」
「うん、わかってる。私もそこまで非道じゃないから。アキレウスに任せるよ。」
「理解のあるマスターで助かるぜ」

そういってアキレウスは朗笑した。どうやら彼と良い関係が結べそうだ。
よかった。

「じゃあよろしくね。」
「おう」

アキレウスと握手を交わし私たちの聖杯戦争が始まった。


とりあえず引かれてなくてよかった。

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