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-212:30:57




「なに?8人目のマスターだと?」
「はい。クラスはランサーだと。」

遠坂時臣は監督役の言峰璃正からの報告に言葉を失った。
先ほどキャスターの召喚が報告されこれで全員そろったと思われた。
だがその数時間後に新たな召喚を感知したとの報告。
しかも8人目というイレギュラーな存在。
このイレギュラーが己の計画に影響を出しかねない。
そんなことがあってはならない。

「それでマスターは一体誰だ?」
「苗字家の長女ー苗字名前です。」
「それは厄介だな。」

遠坂時臣は頭を抱えた。
苗字といえば御三家にならぶ日本人魔術師家系である。
優秀な者を苗字家の跡取りとして引き入れて代々力をつけてきた彼らの中で歴代で最高の力を持つと言われているのが長女名前である。
その存在は言峰璃正の耳にも入っていて、教会の中でも異質な存在として噂になっていた。

その名前が此度の聖杯戦争に参加するとなれば自分が優位だった状態が崩れてくるだろうと両者は危惧していた。

「どうしますか。作戦を変更しますか」

言峰璃正の危惧しているところも分かるが今から作戦を変更したところで良い方向へ向くとは限らない。ならそのまますすめていくほうが良いと遠坂時臣は考えた。

「このまま行こう。」


◇ ◇ ◇


アインツベルン城にいるセイバー陣にも8人目のサーヴァントの話は渡っていた。

「8人目のマスターは、やはり苗字家の者だろう。だとすると、苗字名前…苗字家の10代目当主の長女がマスターだとみて間違いない。だが彼女の情報は何もない。」

衛宮切嗣の報告にアイリスフィールは首を傾げた。

「何もない?」
「あぁ」
「あの苗字家の当主の娘なのに?」

切嗣はアイリスフィールに名前の資料を渡した。
苗字ーその名を知らない魔術師はいない。
それほど有名な家の人間の情報は普通調べようとしなくても耳に入ってくるはずだ。
そのうえ苗字名前は次期頭首候補になるうる長女である。
そのような存在は隠しようのないものだ。

「今まで跡継ぎはいないとされていた苗字家に、数年前突然実子がいるという情報がでた。魔術師としてどれほどの能力を持っているかなどの情報は全くない。ただ苗字家の代表として選ばれただけの実力はあると考えられる。」
「やっかいな相手ですね。」

そばにいたセイバーが怪訝な表情でアイリスフィールの手にある資料を見る。
切嗣は名前の記録が書かれた紙をみてため息を吐く。
彼女はこちらの情報をそれなりに持っているだろう…少し不利な状態だ。
だが彼女一人が増えただけで揺らぐような戦略ではない。

「実力を拝見させてもらおう。」

切嗣は不敵な笑みを浮かべた。

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