1.焦がれる

久しぶりにHOMRAに立ち寄ると入口には八田君が立っていた。何故中に入らないのだろうと窓から中をのぞくと、草薙さんとセクター4の副長世理さんがいた。あぁなるほどと納得して八田君に声をかけた。

「八田君、中に入らないの?」

「なんだ名前さんか。いや、まぁ・・・草薙さんの邪魔になると思って一応な。」

「ふーん。八田君も気遣いが出来るんだ。」

「なっ、お前どういう意味だよ。」

「褒めてるのよ。えらいえらい。」と頭をなでると顔を真っ赤にして、あとか、うとか言葉にならない声をあげた。

「・・・名前さんは良いんですか。」

八田君は、ぼそっと言った。

「何が?」

「草薙さんのこと...好きなんじゃないんっすか。」

八田君の言葉に驚いた。確かに自分は、草薙さんに好意を持っている。それに彼が気づいているとは思わなかった。

「その...何となくだけど名前さんの草薙さんを見る目がいつも優しい気がして、そうなのかと思ったんだが」


普段元気にあばれている八田君だけどちゃんと仲間のことを見ている。

「八田君には敵わないや」と苦笑してみせると、彼は一瞬傷ついたような表情をして黙ってしまった。

「そうね。私は彼の幸せを祈っているから...この思いを告げることはそれを妨げてしまうし、私はもう十分幸せだからいいって思ってね。」

「あんた、馬鹿じゃないっすか。」

「そうだね。」

八田君に言われたことは紛れもなく事実であり、わかっていたことでもある。それでも私は


彼に恋焦がれる



(そんなあんたにホレた俺はもっとバカだ。)