2.追いかける
「クロくん、クロくん。今日の晩御飯は何ですか?」
「うるさい、ついて来るな。今日は、カレーだ。」
「やった。昨日の夜からカレーが食べたかったんです。もしかして私の為にカレーにして下さったんですか!?」
「違う、スーパーで人参とジャガイモが安かっからそうしただけだ。」
「わー、主婦の発想ですね。家計に優しいです。そんなクロくんが大好きです!」
「近づくな!」
こんにちは、伊佐那社です。え?この会話は何かって?
これはクロくんと彼の恋人(自称)の痴話喧嘩です。クロは刀を抜いちゃっているけど、たぶん喧嘩です。
「クロくん、クロくん。今日も綺麗に髪を結ってますね。誰に結ってもらっているんですか?シロくん?もしかして他の女子??わわわ...どうしようクロくんが他の女子にとられちゃう。名前ちゃんピンチです!!安心してクロくん、私がクロくんを守りますから!!」
そういって今日もクロの周りをうろうろする名前さん。
クロは呆れた顔で彼女の先を歩く。
これが日常風景だ。
だけど今日は違うことがおきた。クロを追いかけていた名前さんがこけたのだ。それも盛大に...。
だけど先を歩くクロはそれに気づかず行ってしまう。
そんなクロの姿を見て名前さんは、いつもなら"クロくん"と呼ぶはずなのに何故か彼女は何も言わなかった。
僕は、彼女に大丈夫と聞くと彼女はちょっと困った顔をして立ち上がった。
「えへへ、大丈夫だよ。シロくん。」
そう言った彼女は大丈夫には見えなかった。
「クロ、呼んでこようか?」
「ううん、大丈夫。...ちょっと試してみたかったんだ。クロくんが振り向いてくれるか。やっぱりダメだね。」
「名前さん?」
普段と違って弱気な彼女にたじろぐ。
「もうクロくん追っかけるのやめないとね。実家もそっちの方が落ち着くしね。」
そういえば彼女、旧家の出とか言ってたっけ。実家の方からお見合い話でも来たのかもしれない。
「大丈夫だよ、名前さん」
「え?」
「クロは迎えに来てくれる。」
そんなはずないといった顔の彼女の後ろには、さっきより何だか不機嫌なクロ。
「何をしている?」
「何でもな...」
「名前さんが転んじゃってね。歩けなくて困ってたんだ。」
僕は、彼女の言葉を遮った。そうなのかと言った顔のクロに対して彼女は眉を下げた。
「大丈夫だよ。大した怪我じゃないし」
そういう名前さんの足はどう見ても大丈夫ではない。彼女は無理をしている。
それに気がついたクロがため息をつくと、彼女は脅えた表情をした。きっと彼に嫌われたと思ったのだろう。あんなこと言っていたけどやっぱりクロが好きなんじゃないかと僕は困った表情をする。
が、その心配はクロの行動によって打ち消された。
クロは名前さんの膝の裏に腕を通し、持ち上げた。所謂お姫様抱っこだ。
「クククク、クロくん!?」
「黙れ。舌を噛むぞ。」
そういわれた名前さんは、恥ずかしいよと頬を真っ赤に染めあげた。
「シロ、治療するから先に行くぞ。」
「うん、わかった。」
そういうとクロは訳が分からないと言った表情の名前さんを連れて帰って行った。
クロは素直じゃないなぁとつくづく思う。
早くひっつけばいいのにね。
さて、ゆっくり帰りますか