君の瞳





私は朝比奈家に来ていた。
ここに住んでいる兄弟とは長い付き合いがあり、とても仲良くしてもらっていた。
今日、この家を訪ねたのは近々引っ越すことを告げるためだった。
その兄弟の中でも要には、どうしても告げたかったのだ。
それは彼が一番の理解者であり、淡い恋心を抱いている相手であったからだった。

意を決してインターホンをおした。

「はい?」

「っ!!」

インターホンを押して聞こえてきたのは知らない声。しかも女性特有の高い声。

「あの??」

相手が困惑した声を出した。


「要の友人の名前です。要さん居ますか?」

「すみません、要さんは今出かけていまして・・・もうすぐ帰りますので中で待ちますか?」

「えぇ、そうさせてもらうわ。」

そういうと中から出てきたのは可愛らしい少女だった。


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リビング待たせてもらっているあいだに少女‐絵麻ちゃんと、彼女が兄弟になった話や、私の昔話とかいろいろ話した。

「大変ね、絵麻ちゃんも」

「最初は戸惑いましたけど、今はとても楽しいです」

「よかった、絵麻ちゃんが楽しそうで。」

「ただいま」

そう話している間に待っていた人が帰ってきた。

「妹ちゃん、誰かお客さんが来てっ!!」

リビングに入ってきた背の高い金髪の彼は私を見るなり固まった。アポなしで来てしまったからそういう反応をされても仕方がないなと思ったけど、少し寂しかった。

「お邪魔しています。」

「名前ちゃん・・・久しぶりだね。また綺麗になっちゃって」

「お世辞は結構ですよ、要さん。」

手厳しいねと要は言って絵麻ちゃんのほうを向く。
彼が持っていた袋を渡し、絵麻ちゃんと何やら話し出した。
すると絵麻ちゃんは真っ赤になり彼女は失礼しますと言ってリビングから出て行った。

「可愛い妹さんですね。」

「そうでしょ?自慢の妹ちゃんだからね。」

「もしかして好きなの」

「そうだね。」

冗談で聞いた事を後悔した。そう言った彼はいつもより優しい表情だった。胸が痛んだ。


「絵麻ちゃんも、変な兄が一人いるのが残念ね」

「それ誰のこと言ってるのかな??」

「さあ、誰でしょうね。」

痛みを何とか隠しいつものように話した。そうしているうちに帰る時間。何だか引越すって言いづらくなってしまった。
だけど言う必要は無いだろうな。要には迷惑かもしれない。ただの幼なじみがずっと近くをうろうろしていたら邪魔だよね・・・。

「そろそろ帰ります。」

「もう帰っちゃうの。」

「皆さんの邪魔になっちゃいますしね。」

「じゃあ送っていく。」

「大丈夫ですよ。玄関までで」

そう言って、玄関で引き止める。


「でももう外は真っ暗」
「要さん」
「ん?」


「もし自分の恋が、永遠の片想いって分かったらどうしますか?」

私の口から思わずこぼれた言葉。言ったあとでハッとした。
"貴方が好き"と言っているようなものだ。どうか気づかないで・・・と祈る。


「永遠ね・・・つらいだろうね。」
「そうです...ね」

「好きな相手は近くにいて、自分以外の人を見ているなら尚更だね。」

彼は憂いをおびた表情をした。
誰を思ってそんな表情をしているのだろうか。その相手はきっと私じゃないのだ...。

「そういう時、要さんならどうしますか?」

「うーん、相手の子の幸せを願う」

「そうですか」

「・・・って言うのが普通だけど、でも俺は諦めたくないな。もしかしたらいつか振り向いてくれるかもしれないしね。」

そういった要さんは私に微笑み、眼差しは兄が妹に向けるような優しさを含んでいた。
その優しさに嬉しい、反面妹でしかない現実が悲しかった。

「名前ちゃん、もしかして好きな人がいるの? 俺は、応援するよ。」

昔は呼び捨てだったのにいつの間にか名前ちゃんと呼ばれるようになって、私がどれだけ辛かったか・・・応援するよと言われてどれだけ悲しいか、貴方が知ることは永遠に、無いのだろう。だって、要の目に映っているのは・・・


「ありがとう、要。」

私ではないのだ。


貴方のと映れない私

(大好きだったよ、要)
(さようなら)



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