応援


ホイッスルの音
黄色い歓声
床と靴が摩擦する音
ほとばしる汗


外は太陽に照らされ、気温は30℃をとうに越えているというのに、この空間は熱気に包まれて更に温度をあげていた。

そんなに嫌ならそこから出てクーラーのきいた涼しい室内に行けと言われるだろう。この大学には涼しい図書館があるのだから直ぐに駆け込む事も出来た。

私がそうしなかったのはコートの中にいる彼−朝日奈昴君を見るためだった。分かっているだろうが、私は彼に恋をしている。しかもこの歳になってこれが初恋なのだ。


私が彼を最初に見たのは大学一年の最初の講義だったが意識し始めたのはその年の夏。
例年以上の暑さで、油断をしていた私は熱中症で倒れた。
その時偶然通りかかった朝日奈君が私を抱え助けてくれたのだ。そして少女漫画のように恋をした。

だが、そこから先はもちろん少女漫画のようにキュンとなるような展開はなかった。まぁ話し掛けなかったのだから当然だ。


そして今に至る。

話しは掛けられなかったが、朝日奈君が出ているバスケの試合はいつも見に行っていた。
彼が点を入れるたび私は小さくガッツポーズをしていたのは内緒だ。

とか考えているときに遠いところから歓声。どうやら相手チームがシュートを決め、同点になったようだ。制限時間を確認すると残り1分・・・。



試合再開のホイッスルが鳴る。
応援の声がいっそう大きくなり選手の動きが激しくなる。
一進一退を繰り返し、残り5秒...相手ゴールの近くでボールが朝日奈君に渡った。

朝日奈君はドリブルで華麗に相手選手をかわしていく。

3秒...

コートの半分のところで相手選手に囲まれた朝日奈君は

2秒...


苦い表情をする。
仲間はマークされ、退路も塞がれた。何より時間がない。

「いっけぇぇ!!!!」
彼を見て私はいつの間にか立ち上がり叫んでいた。
応援団の声に被り聞こえたかどうか分からないが、今伝えないとダメな気がした。

1秒...

朝日奈君はおもいっきりゴールに向かってボールを投げつけた。

「いっけぇぇぇ!!!!」

もう一度私は叫んでいた。


ガコンッ


ボールはゴールのふちに当たった。
観客、皆が息をのむ。
注目の的のボールはスローモーションで、ネットの中を通り床に落ちた。


「やった?」

私がつぶやくと周りの皆歓声をあげはじめた。
感動のあまり近くにいた応援団とハイタッチし一緒に喜びを分かち合った。

ふとコートに視線を向けるとチームメイトに囲まれる朝日奈君。
よかったと見つめていると、彼と視線がぶつかった。
いやや、気のせいね。こんな広い体育館の中で私目が合うなんてね

すると朝日奈君は笑顔で何かしゃべった。


「あ、り、が、と、う?」

よく分からないが多分そう言ったのだろう。


何だか、彼を支えられた気がして嬉しくなった。




‐彼女と彼が仲良くなるのも遠くない未来の話‐

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