涙なんてあの日失くした

 5月3日は晴天だった。憎らしくなるくらいの青い空が広がって、散り散りになった雲は陽の光を隠してもくれない。アスファルトに鳥の影がうつる。見上げると視界が白く眩んで、鳥のすがたなどどこにもない。春の穏やかな風は、たおやかな白い指が頬を滑るようにそよぐ。いつも通りに朝を迎えて、いつも通りにだれかが笑って。あぁなのになんだって、犬飼はひとりで彼女の足跡を追っているのだろう。空だってもう泣いてはくれないこんな日に。