椿が落ちて

 アスファルトに横たわった椿の花をつま先で転がした。雨に打たれてまだ若いまま落ちたらしい。ひらききっていない花弁から黄色のおしべがのぞいている。花びらに傷みはなく、溌剌と水を弾いていた。「おまえ、まだきれいなのにね」つま先でなぶりながら囁いた。拾おう、という気持ちにはなれなかったけれど、踏んでしまうにはその花はあまりにもいたいけな面持ちだった。「また次の春に会おうか」わたしはもう、この街を出てしまうけれど。