星に願わない

 ヒュースにとって星は国だった。だから天蓋に煌めく星々を繋ぎ、それを星座と定めて名をつけることや、そこに物語をあてがうという玄界の文化には嘆息した。なんと美しい文化だろう。そうであることを高らかに謳うように、玄界のひとは星を愛でた。彼らにとって星は脅威になり得ず、空にあいた穴から光が漏れているのと同じで、だからこそ星を美しいと讚えられる。
 「星に願うなんて、ヒュースからしたら変だろうけれど」「ああ、変だな」ほんとうに変だとおもった。訊けば、星を死んだひとや神様に見立てているらしい。神の国と呼ばれる星に住むヒュースとしては、それは見立てではなく実態であるけれど、それでも、願いはしないのに。「なにか、ない? おねがいごと」「ない」星を見つめる横顔が振り向かないていどに、ちいさく囁いた言葉は――だから、願いではなく。ただこの空に解かしてしまいたい想いだった。