きみとふたりで落ちていく

「無理だ」
 諏訪は低く呻いて、なまえを見下ろした。彼女は俯きながらも、諏訪の服の裾をきゅっと握っている。ほんのすこしだけ、やわい力で裾を引く彼女はいとけなく、つい心が傾いてしまいそうになるけれど、諏訪は顔を歪ませて繰り返した。
「無理、だ」
 なまえの肩が震えた。一歩、後ろに下がって彼女から離れようとするけれど、諏訪の服をつかんだなまえはそれを許してくれなかった。
「……どうしても、ですか」
 揺れる声が問いかけた。ぎゅう、と心臓が握られるような感覚がした。従いかける心に釘をさす。
「どうしてもだ」
 一辺倒に拒絶を繰り返せば、彼女がゆっくりと顔を上げた。
「大丈夫、ですよ。諏訪さんなら」隠しきれない笑みが浮かぶ。「きっとふたりなら、たのしいですよ」甘く、弾むような声がいっそ悪魔の囁きのようにきこえた。
「ね、だから……」
 ぐっ、と思いがけない力で引かれて、体が傾きかける。すんでで踏ん張れば、もはや彼女は隠すことなく笑みを咲かせて、さらに引っ張る。
 ――悲鳴がきこえた。幾人もの悲鳴と轟音。彼女はその声に空を見上げた。うっとりとした眼差しに情けなくも逃げ出したくなるけれど、きっと彼女は許してくれないだろう。
「一緒に乗りましょう、ジェットコースター」
「いや……無理……」