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ゴールデンウィーク三日目。この日は公園で丸井先輩の弟コンビ+α近所のちびっこたちに囲まれてえらい目にあった。ディスクドッグの披露はもちろんだが、鬼ごっこやらかくれんぼやらの頭数に入れられてしまってとにかく走り通しの笑い通しだったのだ。

そんなわけで本日のベストショットはハン&ジン with ちびっこの集合写真である。信太と健太もいたのでついでに丸井先輩にも送っておいた。仁王先輩からハンとジンがちまいという苦情メールが、丸井先輩からはいつも弟たちと遊んでくれてサンキューなというお兄ちゃんメールが返ってきたので仁王先輩は丸井先輩を見習うべきだと思った。

「というかもう眠いんですけど…」
『おまんは寝てもよか。ただしハンとジンは置いて行きんしゃい』
「スカイプ切りますよ」
『プリッ』

現在の時刻は午後九時二十三分。冬ならばりばりの活動時間だが日中遊び回っていたので疲れて眠い。にもかかわらず赤也からスカイプの話を聞いたらしい仁王先輩がハンとジン可愛さに私を解放してくれない。別にハンとジンだけ画面に映っていればいいのだが私にはパソコンの電源を切るという役目がある。終わるまで寝るわけにはいかないのだ。

仁王先輩の相手をジンに任せ、ハンを後ろから抱き締めてうつらうつらと船を漕ぐ。眠い眠い眠すぎる。仁王先輩の鬼、白髪、ハゲろとうわごとのように繰り返していたら不意に画面の隅で動く何かが目に映った。というか部屋の入り口にトーテムポールよろしく人の頭が積み重なっている。正直キモイ。

「仁王先輩。後ろになんかいますけど」
『知っとる』
「へー、ああ」
『…おまん、ほんまに眠そうじゃの』

適当な相槌すら噛み合なくなってハンのモフモフに顔を埋めた。眠そうだと思うなら寝させてくれ。トーテムポールの顔はとうとうパソコンのマイクが音を拾うレベルまで騒ぎ始めた。彼女がどうのとか聞こえなくもないがたぶん空耳だ。オコジョか何かの聞き間違いだ。

「一発芸いきます」
『ほんまに大丈夫か』
「やっぱいかないです。眠いです。後ろのトーテムポール、だるま落とししたいです」
『分かった。寝てよか。付き合わせて悪かったの』
「…別にいいですよ。それじゃあおやすみなさい」
『ん。おやすみ』

気のせいだろうか。仁王先輩が笑った気がした。別に笑った顔を見たことがないわけではないが、あれはいつもハンとジンに向けられたもので私に向けられる笑顔というものはなかった。まあ私も笑うとしたら鼻で笑うくらいしかしたことがないのだが。ああそうか、ハンとジンにおやすみを言ったから笑ったのか。…いかん。本格的に眠いらしい。どうにかパソコンの電源を切って重たい体を引きずり、私は自室のベッドへ倒れ込んだ。

翌朝、知らないアドレスからメールが何通か来ていた。アドレス変更のお知らせでもないようなので中身は確認せずに削除した。出会い系怖い。



夢現、あれは幻

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