「いやまって……冷静に考えてもマジで無理なんだよな…………」
「何ガ」
「だって無理すぎん? いやむりだよこれ。おかしいでしょ、なんで? 意味わからんわ。ていうか私この間推しガチャ引いたばっかなんだけど?」
「……」
「はあ〜!? キレる、いやもうキレてる。こんなん課金するしかないじゃん? てかもうした。今した。だって見てよこれ、かっこよすぎない? 絵、うますぎない? 顔、良すぎない? 何もかもが天才すぎる。こんなん引くしかないでしょ、推しってだけで引く理由になるのにこんなん出されたら引くしかないでしょ」
「……」
「いやマジで反応して夏目!!」
「反応するのがバカらしすぎル」
「そんなこと言わずにさあ! 今! 情緒がやばいから! この気持ちをぶつける場所がなくて!! しんどいから!」
「多分待ち合わせ直後にそんな意味の分からないこと言われるボクの方がしんどいと思ウ」
「ごめんでも無理だから! いやほんとちょっと落ち着こ?」
「キミがネ」
「いやかっこいい……」
「ねェこれいつまで続くノ?」
「夏目知ってる? 絵師さんの中では描いたら出るって言われてるらしいよ」
「目当てのカードガ? でもキミ絵描けないじゃン」
「だからとりあえず私がどれだけ推しをお迎えしたいか作文を書いた」
「その情熱もっと他に向けられなかったノ?」
「それを読んだ人たちも全員十連で出る魔法をかけた」
「ボクの特権そんなとこで使わないでくれるかナ」
「もちろん私は十連で出ますけど!? 書いてる本人だから当たり前だよなあ!?」
「話聞いてル?」
「ねえ夏目お願い私と私のスマホに魔法かけてよ〜十連で推しがくる魔法かけて……そしたらもう確実だから!」
「生憎、ボクの魔法はそういうものには効かないんだヨ」
「え〜〜じゃあ手! 手ぇ出して!」
「なんデ」
「いいから! ほら!」
「……何してるノ」
「いやこうやって夏目の手を両手で包んだらさ、夏目のパワー分けてもらえるかなって思って」
「意味わかんなイ」
「わかってよ〜やっぱ占い師ってそういうパワーありそうじゃん〜」
「残念ながらあったとしてもそんなことにはパワーは効かないと思うヨ」
「やだ! 効きます! 私が信じてるから!」
「何言ってもダメだねキミ」
「だってこうやってしてるだけですごく元気になるから! 私の力になるから!」
「……はア。それで? そのガチャはいつからなノ?」
「もうすぐ! だからお祈りしてて! 引くから!!」
「わかっタ。それなら、ちゃんとボクが魔法をかけてあげよウ」
「え、ほんとに?」
「効くかはわからないけどネ」
「効く! 効くよ! だって夏目の魔法だもん! 夏目がかけてくれるんだもん! 効くに決まってる!」
「……じゃあほラ、手ェ離して」
「え、こう?」
「引っ込めないデ」
「…………夏目、これって今私がしてたやつの逆バージョンじゃ」
「キミの手をボクが包んだ方が魔法はかかると思うヨ」
「そう、かな」
「うん。大丈夫、これでキミに魔法はかけられた」
「……へへ、これで私無敵だ! うれしい、ありがと夏目」
「まァ、過信はしないことだネ。あとはキミがどれだけ強く思うかにかかると思うヨ」
「わかった! よお〜し待ってろよ推し〜!!!」