「……なまえちゃん?」
「出る出る絶対出る間違いない希望を捨てるな諦めたらそこで試合終了だ」
「あの……」
「私が信じなければ出るもんも出ないんだよ信じるしかない祈るしかない徳を積むしかない」
「あ、あの! なまえちゃん!」
「ヒェア!?」
「だ、大丈夫ですか……?」
「へ? あ、ああ!? つむぎくん!? 何故ここに!?」
「なまえちゃんこそ……俺は元々よく来るんですよ。この神社好きなんです〜」
「ああ、好きそうですねつむぎくん……こういうパワースポット」
「それでなまえちゃんは? なんだかすごく必死の形相でしたけど……なにか大事なことをお願いするんですか?」
「ええそりゃもう、とってもとっても、私のこの命にかえてもいいくらいの大事なものを……」
「い、命にかえても!? それは一体……」
「知りたい? 知りたいですかつむぎくん」
「で、でもなんだか聞くのが怖いような……」
「そんなに聞きたいなら教えてあげましょう」
「いやそこまでは言ってないですけど」
「実は」
「くだらない事で神様の手を煩わせない方がいいと思うヨ」
「痛った!? 頭叩くな暴力反対!」
「夏目くん、なんで現れたのと同時に殴るんですか〜……」
「キミたちが参道でしょうもない事を話してるからでショ」
「しょうもなくない本当に本当に大事なことだからね!?」
「神を都合のいい時にばかり利用するのはどうかと思うけド」
「そんなことないです〜! たまに神社に行けばいつもありがとうございますって言ってるもん! でも今日はマジでホントの本気の神頼みだからさあ!!」
「ええと、それでなまえちゃんの願いっていうのは……」
「ガチャ」
「え?」
「次のガチャが推し。高レア全員といっていいほど推ししかいない。ついでに同時開催のイベントも推しだらけ。こんなん、もうさあ……もうさあ……」
「よくわからないんですけど、ガチャっていうのはソーシャルゲームのこと? ですか?」
「そウ。なまえの定期発作のひとツ」
「発作って」
「なまえが好きなソシャゲデ、推しがガチャやイベントになるとこうして狂いだス。そして付き合いが悪くなル」
「仕方ないじゃん少しでも節約しないといけないんだから!」
「別に食事代くらいボクが出すのニ」
「それは嫌だ。たまにならともかく毎回なんてパパ活みたいじゃん」
「誰がパパダ」
「夏目だっていつも付き合いが良いとは言えないじゃん!」
「ボクのは仕事だかラ! ていうか今日は来てあげたでショ!」
「ああ、二人は待ち合わせだったんですね」
「半場強制的にネ」
「夏目は占い師だし神様に愛されてそうだから、私だけじゃなくて夏目も一緒に祈ってくれればガチャ大勝利を収められる気がして……」
「生憎だけどボクにそんな加護もキミに付き合う暇もないヨ」
「でも今日来てくれたじゃん!」
「たまたま時間が空いてたかラ、単なる暇つぶしだヨ」
「夏目くんって本当に素直じゃないですね〜」
「ね〜」
「帰ル」
「つむぎくん、夏目のことをからかうのは良くないと思います」
「わあなまえちゃん、見事な手のひら返しですね」
「というかセンパイはなんでここにいるノ」
「だって神社はパワースポットじゃないですか」
「パワースポットネェ……。確かに魔力が集まりやすい場所や物というのは昔からあるシ、それが呪いに変わってしまうくらい場合によっては力の強いものになってしまうこともあるけド。一時期のパワースポットブームからその存在が広く認知さレ、ついでに大したパワーもなさそうな場所すらも観光客寄せのためにパワースポットと謳っていると考えるト、何もかもが陳腐に思えてくるネ」
「それでもパワースポットと謳いたいくらいなんだから、それくらいの魅力がある場所ってことなんですよ。それだけですごく素敵じゃないですか?」
「まア、思うことは自由だしネ」
「なんでESアイドルたちってたまに小難しい言葉で急にデカい枠組みのことを話しだすの?」
「ふふ、英智くんには敵わないですけどね」
「やめてヨ、まるでボクも含めてみんなあの老害に似てるみたイ」
「なんでもいいけどさ、早くお参りしよ! ここで駄弁ってる暇あったら少しでもガチャの祈願をして徳を積んだ方が五百億倍良い。そしてつむぎくんも一緒に私のガチャ運を祈ってくれたら嬉しいです。30連以内で推しが全員出るように」
「なまえ、センパイに対して遠慮がなくなってきたネ。もっと雑に扱ってもいいヨ」
「雑っていうのは引っかかりますけど、俺もなまえちゃんと仲良くなれるのは嬉しいですし、もちろんお祈りも一緒にさせていただきますね」
「やった〜! 今思い出したけどつむぎくんって公式のキャッチコピー、幸せ運ぶ魔法使いだもんね、もうこれ勝ち確じゃん」
「うわあよく覚えてますね」
「私だってここ最近は毎回『Switch』のライブ行ってますからね!」
「ああ、ツアー中に夏目くんがご機嫌な日ってもしかしてなまえちゃんが来てくれてる日」
「ほら早く行くんでしょなまえ!」
「あ、ちょっとまってよ夏目〜!」