※主死ぬし欠損もある

原作既知・救済かもしれない


落とし物を拾おうと一歩踏み出したら何故か幕末に居て腕が落ちた女の話。
最初に死ぬ。一回死ぬ。

目が覚めたらどっかで見た様な建物のなかでぐるぐる巻になっている不思議。芋虫になった夢を見ていた
しかも何やらえらい美形に囲まれてるナニコレ状態。
まだ精神的余裕がある。

脱走した羅刹のせいで片腕片足飛んだ状態だったが突如くっついて生き返ったものだから死体処理しようとしてた山崎君はドン引き所か軽くパニック。羅刹変若水絡みかと屯所へゴー。

色々話して自分は死んだとか死人だとか言われてパニク。確かに上着の袖とパンツの膝辺りは赤黒く変色してる。訳がわからないし周りは怖いし怒鳴って問い詰めてくるし頭が追いつかない。ちょっとメンタルが脆くなる主人公。自分が死んでたなんて信じれる訳があるか。
取り敢えずこのよくわからない存在を野放しには出来ないと屯所に置かれることになる。
山南さんの研究手伝ったり(血の提供)して引きこもって生きている。
時々着いてって外にも出るけど無意識に刀に恐怖を覚えてしまったので誰も彼もが怖い。

ちょっとだけ落ち着いた頃ここは薄桜鬼の世界だろうかと悩みに悩んだ挙句ちょっとだけ慣れてきた山南さんにとりあえず話してみる。これは腕を怪我する少し前の事。
ここで主が賭けに出れるかが分岐。
賭けに出られれば少なくとも山南さんの怪我は変若水を飲む程酷くはならないかもしれない。


なんやかんやあって結局泣いて泣いて泣いて倒けつ転びつなんとか生きて誰かを庇って死にかけながら幕末を駆ける話。


落ちは多分原田さん。場合によっては永倉さん。
メンタルの回復具合による


以下お試し冒頭文



ポケットから転がった鈴を拾おうとして、せっかく暖まってきた指を外気に晒した。刺さるような寒さに残っていた熱はすぐに溶けていく。
薄闇の先にある鈴に手が届きそうだったその、瞬間。
聞き慣れない音がした。水音を含んだ様な不快な音。一瞬伸ばした腕が跳ね上げられるような感覚がして霧散する。文字通り腕の感覚が、だ。びちゃりと生暖かい液体が顔に飛んですぐに温度を無くしていく。
つめ、たい。あつい。肩が、痛い。
声も出なかった。喉の奥が詰まった様な変な音が漏れた。息が苦しい。肺が止まったのではないかと言いたくなる程の息苦しさが襲う。どうにか吸い込んだ酸素もすぐに吐き出した。段々と呼吸の間隔が短くなる。頭の中は痛みと苦しさだけで支配されていた。反対の腕で痛みの根源に触れようとして肩から先に何もない事に気付く。腕、手、指先、順を追う様にあったはずの場所を辿ってそのまま目線が落ちていく。さっきまで鈴を拾おうとしていたその地面に、見慣れた布に包まれた腕が落ちているのに気が付いた。
「な、んで」
どうして、腕が落ちているのだろう。なんで、私の腕だろうか。なぜ、なにが。私の腕?
理解が及ばなかった。落ちているのは間違いなく人の腕で包んでいる布は私が着ている服によく似ている。信じられはしなかった。また呼吸が早くなって喉元に何かが迫り上がってくる。必死に抑えて、回らない頭を回す。びちゃびちゃと水音がする。寒い。痛い誰か。
その時砂を踏む音がして目を向けた。誰でも良い、助けて欲しかった。苦しい程に感覚の短い呼吸を殺して、死んでしまいそうな痛みを堪えて振り向いたその時。視界の端で舞った白。誰かにぶつかられた様な衝撃。左胸にさっきと似た寒さと熱を感じて、そして

暗転。






何度も刺し遊ばれた胴や顔を見て不運な事だと同情する。足りない片腕と片足は胴から少し離れた薄闇の中に落ちていた。
血に狂った獣に襲われ死した後もその体を何度も殺され、最後には血を啜られる。体の大きさからして女だろうか。間に合わずすまない。小さな謝罪は白くなった息に溶けて消えた。

どうあれ死体は処理しなければならない。これも自分の仕事だ、悪く思わないで欲しい。さてどうしたものか。着物は筒袖の様だから何処か物好きなお上の妾だとか娘で有れば多少面倒になりかねない。がここまで損壊が酷ければこの人物を特定することも難しい。
取り敢えずこの場からは動かさねばなるまい。
ぐちゃぐちゃになった胴を抱えたところで一間程先に落ちていた腕がずるりと音を立てた。野犬か烏の類がもう死肉の匂いを嗅ぎ付けたのだろうか、取り返そうと手を伸ばした。
腕はすぐに逃げることもなく筒袖の端に引っ掛けた指を引くと呆気なく取り戻せた。足音の様なものも羽ばたきの音もなかった様に思う。
...本当に烏や野犬の類だったのか、いや。きっと何か別の音だったのだろう。そうでなければこの腕が勝手に動いたとでも言うのか。そんなわけもないだろうそう無理に自分を納得させたがなんとも言えない不気味さだけが残った。