全部うそ

  今日は七次元生徒会の体育祭当日。この日のために僕ら七次元生徒会は沢山準備してきた。普段ののんびりしている様子からは、信じられないほど忙しかった。準備をたくさんしてきたので、去年より楽しみだったが、あまりの暑さに思わず校舎へと、逃げ込んできてしまった。外ほどではないにしろ校舎内もじんわりと暑い。思わずため息をついて、いつものサボり場へと足を向けた。いつものサボり場もとい保健室の扉を開けると、冷気が体を包んだ。いつも保健室にいる養護教諭はグラウンドの養護テントにいるので冷房はついていないはず、と疑問に思ったところでベットにいるナニカと目が合った。

「うわ、黛、お前なんでいるの」
「暑いから。緑仙こそ。生徒会、忙しいんじゃないの」
「別に僕がいなくてもかなかなが何とかしてくれるよ」

 スマホを手に転がっている青いインナーカラーの足元に、あまり結ばれた形跡のないハチマキがあった。そういえば明那が”まゆゆ〜!”と探していたっけ。そう思いだした瞬間、外から”まゆ〜どこにいるの〜!”とでかい声が聞こえてきた。

「黛、明那が探してるよ。行かなくてもいいの」
「別に俺が行かなくても不破くんがなんとかしてくれるよ」

 確かにそれもそうかと考え直し、手ごろな椅子に座った。スマホをポケットから取り出して、昨日読んでいた漫画の続きを読むことにした。


 
 味方の飼い猫が大きくなったところで保健室に近づいてくる足音が聞こえた。やべ、と黛と思わず顔を見合わせ隠れようとしたときに、保健室の扉が音を立てて空いた。

「あ〜!緑仙さん、こんな所にいたの!パン食い競争の後から姿がみえないと思ったら!って黛さんも!?」
「なんだ、健屋か。あせった〜」
「健屋もサボり?保健委員忙しいんじゃないの」
「サボりじゃないです〜健屋は先生に頼まれて氷を取りに来たの!」

 少し怒ったように頬を膨らませて冷蔵庫から氷を取りだして、それを袋に入れて縛った。手際よく手を動かすのをなんとなくながめていたら、健屋が振り返った。

「そういえば、緑仙さんのこと夢追さんと加賀美さんが探してたよ」
「え、あいつらきてんの?教えてないのになんでわかったんだよ」

 体育祭があること自体、何も言ってないのに何で日付けまで分かったんだ。確かに最近は体育祭の準備で帰りは遅くなっていたけど。どうせ、夢追だ。ゆめおが全部悪い。

「黛さんのことも探してたよ、加賀美さん」
「ハヤトさんが?」
「あと三枝さんとふわっちが」
「まださがしてるんだ」
 
 健屋が苦笑を浮かべながら言った。それからにっこりと微笑んだ。

「さ、二人とも行くよ。もうそろそろ終わりだから」

 確かにそろそろ閉会式の時間だ。ずっと保健室にいたが、もう少ししたらかなかなに怒られる気がしてきたので、重い腰をゆっくり上げる。あいつらに会うためではない。黛も出る気になったらしくやる気がなさそうにハチマキを持っていた。結ぶ気はなさそうだ。健屋はもう外に行ってしまったようで、保健室に姿は見えなかった。歩くの早いな。明那の叫び声がまだ続いてるので、黛のことを見ると何とも形容しがたい顔をしていた。見なかったことにしようと顔をそらしたら、”緑仙〜!!”と夢追の声が聞こえてきた。僕の顔を見た黛が、同情の目を向けてきたので、僕もさっきの黛と同じ顔をしてたんだなと思った。

「緑仙呼ばれてるよ」
「黛もだよ」

 ため息をついて思わず少し笑ってしまう。疲れと、呆れの混ざった顔をした黛とこれからくる襲撃に備えて目を閉じた。

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