いくぞ!バレンタイン大作戦

 最近、夢追と加賀美からよく物をもらう。
 
 もう食べ終えてしまった愛用ののど飴がいつのまにか置いてあったり、気になっていたスイーツを差し入れとくれたり。最初はただ親切だなと、喜んでもらっていたが、ここ最近なんか様子がおかしい。どんどんエスカレートしている気がする。廃版になった好きな漫画、三時間並ばなければ買えない流行りのスイーツ、気になっていたブランドの靴。ある時は手渡しで、ある時は七次元生徒会の控え室に。ご丁寧に緑仙さんへと名指しで。あと、最近やたら甘いもの食べたいって言うし。さすがに気味が悪かった、正直に言うときもかった。そんなに食べたいなら、自分で買え。そんなことが一ヶ月くらい続いている。もう我慢の限界だった。なぜこんなことをしているのか、いったい何が目的なのか。二人に聞かなければ。

 七次元生徒会の収録日、いつも最後まで残る控え室を一番最初に出る。今なら、ろふまおの休憩時間だし、打ち合わせが終わる頃だろう。運良く廊下を歩いていた夢追の腕を掴む。

「え、あの、り、緑仙さん?え?この腕はなに?」
「静かにして」

 騒ぐ夢追を黙らせ、そのままろふまおの控え室へ向かった。夢追を引っ張りながら歩くのは、思った以上に歩きづらかった。軽くノックしてから扉を開ける。開けた先にいた驚いた顔をしている加賀美の手をとって、夢追と同じ状態にする。一応、去り際に頭だけ下げていく。誰か(たぶん甲斐田あたり)が親指を立ててるのが見えた。

「え、緑仙さん?あれ、夢追さんも。どうしたんですか?あの、緑仙さん?」
「静かにして」
「あ、え、はい……」

 大人しくしている夢追と騒ぐ加賀美を連れて、人目につかない場所へ向かう。流石に両手が塞がるのは動きづらかったので、夢追と加賀美の手を繋がせ、前を歩かせた。急に恋人繋ぎにされた夢追と加賀美の顔が、面白すぎて写真を撮りたくなった。人目のない自販機の前まで移動して、二人のことを見る。見上げなければいけなかったのが癪で、眉を顰めると加賀美が少しかがんだ。それに腹が立ったので脛を狙って蹴った。

「床」
「おっけー、床ね」
「ええ、いった……床ですか、わかりました」

 いい年した大人ふたりのつむじを見下ろすのは気分がいい。いい眺めだな、と深くうなずく。よし、気を取り直して。

 「……夢追、加賀美」

 意識して低い声を出す。少し焦った顔をしている夢追と堂々としている加賀美を睨みつけた。

 「一体、なにが目的なんだよ」
 「……え?なにが?」
 「最近の二人。僕に物あげすぎじゃない?」
 「……えっと、それは」
 「緑仙さんからのチョコが欲しくて、つい」
 「ちょ、ハヤト!!!!」

 ついに開き直った加賀美が本音をこぼした。思ったより早い。同じく床に座った夢追が加賀美を止めようと慌てる。

 「……ふうん」

 さらに低くなった声に夢追がさらに慌てた。
 
 「やっぱり、怒ってるよ」
 「まずかったですかね……」
 「開き直るのはやりすぎだよ」
 「夢追さんだってチョコ欲しがってたじゃないですか」

 声を抑えた夢追が加賀美のほうを見て言う。全然抑えられていない内緒話。こいつら、本当に年上?チョコ……そういえば、そろそろバレンタインだ。楓ちゃんとンゴが一緒に作るとか言ってたな。混ぜてもらおうかな。

 「いいよ、チョコ」
 
 息をのむ音がやけにはっきり聞こえた。時間が止まったように動かない二人に口元をゆるめた。そんなに欲しかったのかよ。いいのを見れたなと二人のそばを離れた。




 

 「え、やったあ!!やりましたよ、夢追さん!!!」
 「ええ、なに今の笑い方……めちゃめちゃえっちじゃん」

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