Monologue

私の好きな人は信条のために善も悪も敵も味方も友も何もかもを捨ててその手を血に染めたような人です。当たり前にこの人の人生にわたしは存在していませんし、入り込む隙もありません。そしてこの人は自分の目的を果たす傍ら片手間で恋愛できるほど器用な人間でもないと思っています。でも全く人の心が無い人じゃない。たった1人の女の子を救おうとしたことも、何もかもを捨てたのは師と友を想うが故だったことも私は知っているからです。本当は情が深くて優しい人であることを知っています。そして心優しい彼は私の好意を蔑ろにするような無粋な人ではないことも知っています。手の届かない場所にいるこの人の背中をただ見つめるだけで十分だったのに、隣で笑い合いたい気持ちがずっと拮抗しています。この人の覚悟の強さに惚れたはずなのに、この人の優しさに甘えたくなります。

私は自分が幸せになりたくて、この人を好きになったのではありません。自分のくだらない欲望を、つまらない理想をこの人にぶつけたい訳じゃない。だからこの人と一緒になれないことが、この恋が叶わないことが不幸なことだとは思いません。ただ好きな人に幸せでいて欲しいだけ、ただ好きな人のことを好きでいたいだけです。