せっかくのクリスマスイブだっつーのに、俺が今いるのは北海道。

ツアーをやらせてもらえるのはすごく嬉しいことだけど、今日だけは東京にいたかった。少しばかり運営者を恨んでしまう。



もしもし?


東京に居たならきっと今頃一緒に過ごしていただろう彼女に電話をかける。
いくら友達付き合いを大事にすると言っても、クリスマスくらいは彼氏優先するだろ。


「メリークリスマス」

ふふふ、メリークリスマス


言い方が少しキザっぽかったからだろうか。芽依は可笑しそうにクスクス笑う。

顔を想像したら余計に会いたくなってきた。
バカだ俺。自分で自分の首絞めてどうする。


ライブお疲れ様。楽しかった?

「すっげー楽しかった。道産子元気すぎ」

良いことじゃん

「こっちが圧倒されるくらいだぜ?」

EXILEしっかり!


歌手とアイドル。ジャンルは違うが、お客さんを楽しませるパフォーマンスをするという点で、俺たちは共通している。

仕事に対する芽依の姿勢はとても尊敬できるものだ。

付き合っていると、余計に刺激を与えられる。



「てか次いつ会えんの」

NHKで嫌っていうくらい会うことになるよ

「…じゃなくてプライベートで」


男心がわかってないっつうか、鈍感っつうか。デートに誘ってることくらい気付けよ。


ちょっと待って

スケジュール帳を出しているんだろう、ガサガサ音がする。

年内にプライベートで会うのは難しいか。芽依は紅白の司会を務めるから、これからNHKに籠もる毎日だ。
いくら会えると言っても、仕事とプライベートじゃモチベーションが全然違う。会うだけじゃないし、ね。


えーっと…あ、相葉ちゃん、ちょっとペン貸して

はいよー


――相葉さん?


んー、いつならいいかなあ

「ちょっと待った、今どこ?」

え?相葉ちゃん家


おいおい、もう0時前だぞ?
こんな時間に彼氏じゃない男の家にいるってどうなの。

いくら相葉さんの誕生日だからだろうと、クリスマスイブの夜を俺以外の男と過ごされるのは嫌だ。


「…まだ帰んねえの」

んー?もうちょっとしたら帰るよ

「…あんま遅くなんないうちに帰れよ」



何で俺以外の男の家上がってんだよ。今すぐ帰れ。

本当はそう言いたいのに、言えない。
言ってしまったらきっとこの関係は終わってしまうから。

それに、相手は相葉さんだ。
相葉さんだけじゃない。嵐の5人は別格。芽依の中の一番だ。
彼氏がいても、きっと芽依は俺じゃなくて5人を取る。

俺がどう頑張ったって、彼らより上に行くことはできないのだ。


電話を切る際に聞こえてきた、泊まってけばいいのにという声が妙に耳に残った。





越えられない人達