サングラスをかけて変装しているつもりなんだろうけど、オーラが隠し切れてなかったからすぐにわかった。

EXILEのTAKAHIROだ。


ここは高級マンションだし、彼が住んでいるのかもしれないから、エレベーターの前ですれ違ったって何もおかしいことはない。

でも俺は知ってるんだ。
昔芽依とこの人が付き合ってたこと。



あれ、どしたの急に


いつだって芽依は家に上げてくれた。
この間のこともあって、避けられてもおかしくないのに。



「あー、腹減った」

ご飯食べてないの?

「うん、まだ」

シチューあるけど食べる?

「まじ?食う食う」


温め直してくれる芽依の背後から鍋を覗き込む。うん、美味そう。

こうしていると新婚さんみたいで、少し複雑な気持ちになった。


「…さっきさ、」

んー?


シンクには、シチューが入っていたであろう皿が二枚。


「EXILEのTAKAHIROくん来てた?」

……


芽依の手が止まった。


「エレベーターんとこで会った」

…そうなんだ


美味そうな匂いが漂ってきて、ますます空腹感が増してくる。
しかし今はそんなことより、もっと大事なことが頭に浮かんだ。



「…いやいや、なんだよその反応。別にいいじゃん、TAKAHIROくんが遊びに来たって」

ゆっけ、

「仲良いことくらい知ってるし!」

聞いて、ゆっけ

「現に俺だってこうやって家上がってるしーー」

雄輔!

「っ!」


…“雄輔”。


ちゃんと話さなきゃいけないって思ってた


やめろ。聞きたくない。
俺は、お前に名前を呼ばれるだけでバカみたいに嬉しいってのに。


私、敬浩と付き合ってる

「…前付き合ってたことは知ってるよ」

違う!またヨリ戻したの

「……」

黙っててごめん


仕方ねえよ、だって俺、お前に振られてんだもん。
振った相手に言いにくいことくらいわかる。

もう芽依はTAKAHIROくんの女だ。俺は友達として、祝福してやらなきゃいけない。


「おめでとう」

……

「つーか好きな人いたんなら、言ってくれれば良かったのに」

え?

「俺が告ったときも、TAKAHIROくんのこと好きだったんでしょ?」

……


ちょっと待って。
なんで黙んの。



…ごめん



…は?


「…それは何に対して謝ってんの?」

ゆっけが思ってるようなことじゃないからーー

「もういいよ!!」


バンっと机を叩いて立ち上がる。


待って、話を聞いて

「何を聞くんだよ!!俺はダメだけど、TAKAHIROくんとは付き合える。そういうことだろ!?」

ーーっ!


俺の腕を掴んでいた芽依を振り解いて玄関に向かう。
それでも着いてくる芽依。


「結局お前は、好きじゃなくたって付き合えるんじゃん」

それは、

「なのに振られたってことはさ」

そういうことじゃん?






芽依を拒絶したのは、今日が初めてだった。

ドアを閉めるときに隙間から見えた芽依の顔を、多分一生忘れられないだろう。





嘘がわかった途端に

(愛は悲しみに変わった)