『続いては、ビッグニュースです。俳優の赤西仁さんと女優の黒木メイサさんが――――』


またか。

朝からワイドショーはこの内容ばかり。
そりゃそうか、ジャニーズ事務所のアイドルと人気女優の結婚だもん。


「それにしても赤西が結婚とはねー」

「なんか意外だよね。ずっと遊んでそうなのに」


…確かに仁は遊び人だけど。ああ見えて、子供が大好きなんだよ。子供欲しいってずっと言ってたんだよ。


「そういえば芽依、赤西と仲良いけど知ってたの?」

「……」

「?、芽依?」



¨俺、結婚するんだ¨

容易に思い出せる2日前の仁の顔。

私は笑えていただろうか。




















***




大事な話がある、という仁と会えたのは、深夜2時頃だった。


いつものようにコーヒーを出そうとすると、止めの声が。


「ちょっとさ、外出ね?」

「え?」

「付き合ってほしいとこあんだよね」


そう言って仁は車のキーを取り出した。あ、今日はタクシーじゃなくて車で来たんだ。



行き先も目的もわからないまま、とりあえず仁の車に乗り込む。

仁の車に乗るのはかなり久しぶりだった。
煙草と香水が混ざった仁の匂いがする。

車内に流れるのは洋楽。


大事な話が何かすごく気になったけど、こういうのってタイミングが大事だと思うから。私から催促はできない。


「ごめんな、こんな時間に外連れ出して」

「ううん。仁に迷惑かけられのなんていつものことだし」

「…そうかもな」


そう言って仁は苦笑いするだけだった。

いつもなら「は?俺だって芽依に超迷惑かけられてっから!」って子供みたいに反論してくるのに。
今日はやけに素直というか、大人しいというか。…なんか調子狂うな。




長いこと車を走らせて着いたのは海だった。
こんな季節だし真夜中(ほぼ明け方に近い)だから人は誰もいない。


「さむっ…」


車内が温かかったから、余計に外の空気が寒く感じる。思わず肩を竦めた。


仁は砂浜に腰を下ろした。
寒さに震えながらも、隣に続く。

時々車が通る音と、波が打ち寄せる音。それ以外はお互いの息遣いしか聞こえてこない。


「俺さ、」

「うん?」

「芽依のこと、ホントに大好きだった」

「…うん」


何度か気持ちを伝えられたこともあったし、気付いていないわけではなかった。
それを知った上でこうして仲良くしていた。


「こんな好きになったの初めてってくらい大好きでさ」

「……」

「多分俺、このままずーっと芽依のこと好きでいるんだと思ってた」


ねえ、仁。




「俺、結婚するんだ」




結婚だなんて、すごく喜ばしい報告なのに。

なのに。


なんでそんなに、泣きそうな顔をするの?



「芽依のこと、幸せにしてやりたかった」

「……」

「でもさ、俺のことを幸せにしたいって言ってくれる人が現れて」

「……」

「そいつに、幸せにしてもらうことにした」

「  おめでとう」


おめでとうおめでとうおめでとう。

心からそう思ってるよ。結婚おめでとう。


「仁は、私を幸せにしてやりたかったって言ったけど」

「……」

「私十分幸せにしてもらったよ」

「…芽依」

「だから今度は、仁が幸せにしてもらって?」


こら芽依。なんで泣きそうになってるの。

違うの、これは嬉し涙なの。大切な友達が結婚するなんて、こんな喜ばしいことないんだよ。
少し寂しいなんて思っちゃいけないの。仁の気持ちに応えなかった私に、そんな風に思う権利無いんだから。




「…綺麗」

「……」


もう夜が明ける。
真っ暗だった空が、綺麗な紫色に変わっていた。





ムラサキ

(あの日に見たムラサキを)
(また見に行けたらいいな)




song by Jin Akanishi