『続いては、ビッグニュースです。俳優の赤西仁さんと女優の黒木メイサさんが――――』


またか。

朝からワイドショーはこの内容ばかり。
そりゃそうか、ジャニーズ事務所のアイドルと人気女優の結婚だもん。


それにしても赤西が結婚とはねー

なんか意外だよね。ずっと遊んでそうなのに


…確かに仁は遊び人だけど。ああ見えて、子供が大好きなんだよ。子供欲しいってずっと言ってたんだよ。


そういえば芽依、赤西と仲良いけど知ってたの?

……

?、芽依?



¨俺、結婚するんだ¨

容易に思い出せる2日前の仁の顔。

私は笑えていただろうか。




















***




大事な話がある、という仁と会えたのは、深夜2時頃だった。


いつものようにコーヒーを出そうとすると、止めの声が。


「ちょっとさ、外出ね?」

え?

「付き合ってほしいとこあんだよね」


そう言って仁は車のキーを取り出した。あ、今日はタクシーじゃなくて車で来たんだ。



行き先も目的もわからないまま、とりあえず仁の車に乗り込む。

仁の車に乗るのはかなり久しぶりだった。
煙草と香水が混ざった仁の匂いがする。

車内に流れるのは洋楽。


大事な話が何かすごく気になったけど、こういうのってタイミングが大事だと思うから。私から催促はできない。


「ごめんな、こんな時間に外連れ出して」

ううん。仁に迷惑かけられのなんていつものことだし

「…そうかもな」


そう言って仁は苦笑いするだけだった。

いつもなら「は?俺だって芽依に超迷惑かけられてっから!」って子供みたいに反論してくるのに。
今日はやけに素直というか、大人しいというか。…なんか調子狂うな。




長いこと車を走らせて着いたのは海だった。
こんな季節だし真夜中(ほぼ明け方に近い)だから人は誰もいない。


さむっ…


車内が温かかったから、余計に外の空気が寒く感じる。思わず肩を竦めた。


仁は砂浜に腰を下ろした。
寒さに震えながらも、隣に続く。

時々車が通る音と、波が打ち寄せる音。それ以外はお互いの息遣いしか聞こえてこない。


「俺さ、」

うん?

「芽依のこと、ホントに大好きだった」

…うん


何度か気持ちを伝えられたこともあったし、気付いていないわけではなかった。
それを知った上でこうして仲良くしていた。


「こんな好きになったの初めてってくらい大好きでさ」

……

「多分俺、このままずーっと芽依のこと好きでいるんだと思ってた」


ねえ、仁。




「俺、結婚するんだ」




結婚だなんて、すごく喜ばしい報告なのに。

なのに。


なんでそんなに、泣きそうな顔をするの?



「芽依のこと、幸せにしてやりたかった」

……

「でもさ、俺のことを幸せにしたいって言ってくれる人が現れて」

……

「そいつに、幸せにしてもらうことにした」

  おめでとう


おめでとうおめでとうおめでとう。

心からそう思ってるよ。結婚おめでとう。


仁は、私を幸せにしてやりたかったって言ったけど

「……」

私十分幸せにしてもらったよ

「…芽依」

だから今度は、仁が幸せにしてもらって?


こら芽依。なんで泣きそうになってるの。

違うの、これは嬉し涙なの。大切な友達が結婚するなんて、こんな喜ばしいことないんだよ。
少し寂しいなんて思っちゃいけないの。仁の気持ちに応えなかった私に、そんな風に思う権利無いんだから。




…綺麗

「……」


もう夜が明ける。
真っ暗だった空が、綺麗な紫色に変わっていた。





ムラサキ

(あの日に見たムラサキを)
(また見に行けたらいいな)




song by Jin Akanishi