俺、結婚するんだ。


ケジメをつけたはずなのに。芽依に報告したとき、すごく苦しくなった。

芽依も泣きそうな顔をしているように見えたのは、俺の都合の良い幻覚?






ジュニアの頃から芽依のことは知っていた。女の子がいるなんて、そりゃあチェックするっしょ。
でもそのときはすげえガキだったし。他の女の子との出会いが無かったわけでもないから、もちろん恋愛感情なんて無かった。


まともに絡んだのは、ドラマ『ごくせん』のとき。

¨渡辺芽依です、よろしくお願いします¨

同じ事務所でもデビューしていて売れっ子の芽依と、まだまだな俺。一緒になることなんてそんなに無かったから、目の前で姿を見るのは久しぶりだった。
役柄のために明るく染めた髪も、その華やかな顔立ちを更に引き立たせていて。
少し見ない間にぐんと綺麗になっていた。


男だらけということもあって、現場でも大人気だった芽依。
それでも

¨仁おはよ!¨
¨なんか今日仁元気無いね。どしたの?¨


同じ事務所ってのもあって、特に俺にはなついている気がした。(カメもだけど)
単純な俺は、芽依は俺のことを男として好きなんだと思った。

だから初めて家に入れてくれたとき、芽依とヤろうと思って押し倒したら、殴られた。


¨何すんの!?¨
¨何って…ナニ?¨
¨ふざけんなバカ!ほんっとありえない!!¨
¨はぁ?なんでそんなキレてんの?俺のこと好きなんだろ?¨
¨…は?¨

このときようやく、俺の勘違いだったことがわかった。
むしろ逆で、心奪われてたのは俺の方だった。後戻りできねーくらい好きになってた。


どんだけ「好きだ」って言っても振り向いてくれる素振りすらない。そんな女をずっと想い続けてるなんて俺らしくない、って自分でも思ったし、周りからも言われた。
でも俺は、
――芽依じゃなきゃダメだった。

俺のことを好きだと言ってくれるハーフ美女なんかよりも、全然振り向いてくれない芽依が良かった。

、って名前を呼ばれるだけでバカみたいに嬉しくなった。

芽依の笑顔を見るだけで幸せだった。





















ついさっきまで芽依が座っていた助手席には、香水なのかシャンプーなのか、芽依の香りがまだ残っている。


「…もう卒業しなきゃ、な」


卒業式だからさ、今日だけは泣いてもいいっしょ?
長い片思いに終止符を打つんだから。


大好きだった。
いや、愛してた。マジで。

だけどもう、前みたいに会えない。俺が本当に芽依から卒業するまでは会っちゃいけないんだ。



「…っし、」


俺はこれから、彼女が待つ家に帰るんだ。

もう、前に進むんだ。





君からの卒業式