「ごめんね、ご飯一緒に食べれなくて」

「仕事だろ?仕方ねーよ」




2月14日。…もう日付変わったから15日か。
クリスマスを一緒に過ごせなかったからせめてバレンタインは、と思って誘ってみたものの、芽依が帰ってこれたのはこんな時間。
最近は映画公開を控えていて特に忙しいらしい。毎日日付を超えてから家に帰るって言っていた。

同業者として尊敬はしているけど、彼氏としては体調の方が心配になってしまうわけで。


「なんか隈が前よりひどくなってね?」

「そんなことないよ」

「ちゃんと寝れてんの?」

「うん。移動中とかも寝てるし」

「昨日はどれくらい寝たの」

「んー忘れちゃった」

「…頼むからちゃんと休んで」


とか言いながら、芽依の睡眠時間を削ってまで会っている俺は矛盾している。


「もー今日どうしたの?」

「どうもしてない。彼女の身体を心配するのなんて当たり前のことだろ」


たとえ気持ちの大きさが違っても。今は俺と芽依は恋人同士なんだから。

彼氏という肩書きがあるだけで、出来ることが変わってくる。何も言わずとも傍にいれる嵐のメンバーですら出来ないことも、出来るんだ。
人気者の芽依だから、友達からの誘いも結構多くて、仕事が早く終わる数少ない日も予定が入っていることが多い。だから俺は芽依とそんなに会っていない。きっと嵐のメンバーのほうがよく会っていると思う。それでも。そんなに頻繁に会っている彼らよりも。芽依が心を許しきって信頼しきっている彼らよりも。俺は芽依のいろんな顔を見れる。

それに、この業界の中だけでも芽依を想っている野郎が何人もいることくらい知っている。でも奴らは芽依に触れることすらできない。

そんな優越感を感じている俺を、芽依はどう思う?気持ち悪いと思う?


「なあ」

「ん?」

「みんなにはあげたの?」

「お菓子?」

「うん」

「んー、仕事で会う人たちにはあげたよ」

「ふーん」

「…でもみんな義理チョコだよ?」

「   。」

「本命は敬浩にしかあげてない」


……なんでこんなかわいいこと言うかなあ。
こんなセリフ、みんな聞いたことないっしょ絶対。やべーちょーやべー。


今こうして腕の中に芽依がいることが幸せ。
芽依に触れることが幸せ。

もう、それでいい。





Mr.ハッピーマン