「…は?え、芽依?」



由里子と別れてからその足でゆっけのマンションまで来た。

きっと連絡しても返事なんて来ない。わかりきっていたからあえて連絡はせず、強行突破。


どれくらい待ったかなんてわからない。
10分かもしれないし、3時間かもしれない。ただ、手の感覚はもうほとんど無かった。


「何してんの」

「ゆっけを待ってた」

「は」

「…謝りたくて」



そう言うとゆっけは小さな声で「ばかじゃねーの」と呟いて、家に上げてくれた。


これから自分が言おうとしていること、そしてそれに対するゆっけの反応を想像すると少し怖い。
由里子の言うとおり、都合の良い話だから。

でも、ゆっけとこのまま疎遠のままなんて嫌だ。

仮に状況が変わらないとしても、自分の気持ちを伝えないのと伝えたのでは全然違うから。



「ごめんなさい」

「…何が?」


――コワイ。

1度もわたしに向けられることのない視線。でもそれに臆してちゃいけない。


「ゆっけを傷つけたから」

「……」


いつも正面から「好きだ」と伝えてくれた。正直、そこに甘えてた。
軽く流して仲良くしてた。

でも、きちんと向き合わなければいけない。


「言い訳に聞こえると思うけど、一応聞いてほしい」

「……」

「少しくらい遊びなよって友達に言われた時期に、ヨリ戻したいって言われて」

「ん、」

「前好きだったんだから、きっとすぐ好きになれるって…軽い気持ちでOKした」

「…今は?」

「え、」

「今は好きなの?TAKAHIROくんのこと」

「…うん、好き」

「…そっか。ならいいや」


そう言ってゆっけは、初めてわたしの目を見てくれた。


「芽依がそんなヤツじゃないってわかってたし、俺も」

「そんなヤツ?」

「好きでもない人と付き合えるような器用なヤツじゃないってこと」

「……」

「俺こそごめん、怒ったりして」


仲直りしよ、と言って差し出された右手。
一瞬躊躇ってしまったけど、わたしも自分の右手でゆっけのそれを握った。


芽依と会わない間はこういうことがあったんだ〜とにこにこしながら話すゆっけに、笑顔で相槌をうちながらも、さっきの言葉を頭の中でゆっくり繰り返していた。


ーー今は好きなの?TAKAHIROくんのこと





笑顔の仮面は被ったままで