拝啓、可哀想なアンタへ
マネージャーと楽屋に入ってくるなり、みんなにお話がありますという芽依の顔は、いつもより強ばっていて。
彼女の言う話が何かなんて、みんななんとなく察していた。
芽依に限らず、メンバーの誰かが神妙な面持ちで「話がある」とマネージャーを引き連れているときは、良い話ではまずない。
「今度週刊誌にわたしの記事が出ます」
――そして大抵は、熱愛だのなんだので、メディアを騒がすことになるときだ。
「マジか」
「みんなにも迷惑かけると思う、ごめんなさい」
「…内容は?」
「俳優の向井理さんとの熱愛」
マネージャーの言葉に、ピクリと大野さんの眉毛が反応する。芽依は俯いたままだ。
「写真も撮られてるけど、決定打になるものではないからいつも通りこっちは否定するから、何か聞かれても合わせるようにね」
「はーい」
正直、こういうことはそこまで珍しいことでもない。たぶんみんな一通りは経験している。
特に芽依の場合は、ジャニーズ唯一の女性ということもあって、昔からあることないこと記事にされることが多かったので、もうこちらは慣れっこです。
けど、同じグループのメンバーというだけで、記者達から色々と問いただされることもあるので、状況だったり回答内容は確認しておく必要がある。
「え、てかよくOKしたね」
「一応向井さんの事務所とも話し合って、お互いの宣伝にもなるっていうのと、そこまでイメージダウンには繋がらないだろうからという結論に至った感じ」
「……」
「なるほどね」
「まあ詳しくは本人に聞いて」
昨日散々話し合ったから。
そう言ってマネージャーは忙しげに楽屋を出て行った。
芽依が大きく溜め息を吐く。
「お疲れ」
「ん、ごめん色々と」
疲れの色を隠し切れていない表情の芽依。
ちょうど今は映画のプロモーション活動で、通常よりも忙しくしている時期に、事務所からも色々と言われたのだろう。自業自得と言ってしまえばそうなのだが、やはりそれだけでは考えられないのは、俺がコイツに甘いからなのか。
「あのね、一応言っておくと、本当に付き合ってないの」
「え、あ、そうなんだ」
「うん、なんだけど、…昔付き合ってたのは事実だから、あながち間違ってはないというか」
「どのタイミングを撮られたの?」
「…この前ちょっと飲み過ぎちゃって…。気付いたら理くんが迎えに来てくれてて」
…ほんとこの子は。
迎えなら俺らがいくらでも行くっていうのに。
それを伝えると、どうやらそのとき飲んでたメンバーは2人が別れたことを知らず、いらぬ気を遣ったらしい。
「はあ……」
「芽依、」
「ん?」
「俺らのことは気にしなくていいから、他んとこはきちんとフォローしなよ」
スキャンダルひとつでイメージダウンしてしまうこともある俺らの仕事。
それがたとえ真実ではなかったとしても、メディアから拡散された情報は、瞬く間に視聴者の心を揺さぶってしまう。
たとえばドラマや映画、CMなどは、演者のスキャンダルのイメージを持たれてしまうので、きちんと詫びを入れなければならない。
あとは、
ーー恋人にも誤解を解く必要がある。
芽依に今彼氏がいることは、なんとなく気付いていた。普段に比べて浮かれたりするわけではないけど、さすがに10年以上も一緒にいると、些細な変化でも目に付くようになる。
芽依はモテる。
彼氏の有無に関わらず、彼女に言い寄る男はたくさんいるし、虎視眈々と隣の座を狙っている俺のようなタイプもいる。
だから彼氏がいることは別に珍しくも何ともないわけで、いちいち一喜一憂することはもうなくなった。
俺は芽依とそういう関係になったことはないけど、彼氏の気持ちを考えるとまぁ同情はする。実際同業者と付き合って、相手が俺ではない別の誰かと熱愛を囁かれたときは、こんな冷めてる性格でも一応複雑な気持ちにはなったもんだ。
ニノどしたの、と力無く微笑む彼女を横目に、姿もわからぬ男を哀れむのであった。
拝啓、可哀想なアンタへ
(お気持ちはお察しします)
彼女の言う話が何かなんて、みんななんとなく察していた。
芽依に限らず、メンバーの誰かが神妙な面持ちで「話がある」とマネージャーを引き連れているときは、良い話ではまずない。
「今度週刊誌にわたしの記事が出ます」
――そして大抵は、熱愛だのなんだので、メディアを騒がすことになるときだ。
「マジか」
「みんなにも迷惑かけると思う、ごめんなさい」
「…内容は?」
「俳優の向井理さんとの熱愛」
マネージャーの言葉に、ピクリと大野さんの眉毛が反応する。芽依は俯いたままだ。
「写真も撮られてるけど、決定打になるものではないからいつも通りこっちは否定するから、何か聞かれても合わせるようにね」
「はーい」
正直、こういうことはそこまで珍しいことでもない。たぶんみんな一通りは経験している。
特に芽依の場合は、ジャニーズ唯一の女性ということもあって、昔からあることないこと記事にされることが多かったので、もうこちらは慣れっこです。
けど、同じグループのメンバーというだけで、記者達から色々と問いただされることもあるので、状況だったり回答内容は確認しておく必要がある。
「え、てかよくOKしたね」
「一応向井さんの事務所とも話し合って、お互いの宣伝にもなるっていうのと、そこまでイメージダウンには繋がらないだろうからという結論に至った感じ」
「……」
「なるほどね」
「まあ詳しくは本人に聞いて」
昨日散々話し合ったから。
そう言ってマネージャーは忙しげに楽屋を出て行った。
芽依が大きく溜め息を吐く。
「お疲れ」
「ん、ごめん色々と」
疲れの色を隠し切れていない表情の芽依。
ちょうど今は映画のプロモーション活動で、通常よりも忙しくしている時期に、事務所からも色々と言われたのだろう。自業自得と言ってしまえばそうなのだが、やはりそれだけでは考えられないのは、俺がコイツに甘いからなのか。
「あのね、一応言っておくと、本当に付き合ってないの」
「え、あ、そうなんだ」
「うん、なんだけど、…昔付き合ってたのは事実だから、あながち間違ってはないというか」
「どのタイミングを撮られたの?」
「…この前ちょっと飲み過ぎちゃって…。気付いたら理くんが迎えに来てくれてて」
…ほんとこの子は。
迎えなら俺らがいくらでも行くっていうのに。
それを伝えると、どうやらそのとき飲んでたメンバーは2人が別れたことを知らず、いらぬ気を遣ったらしい。
「はあ……」
「芽依、」
「ん?」
「俺らのことは気にしなくていいから、他んとこはきちんとフォローしなよ」
スキャンダルひとつでイメージダウンしてしまうこともある俺らの仕事。
それがたとえ真実ではなかったとしても、メディアから拡散された情報は、瞬く間に視聴者の心を揺さぶってしまう。
たとえばドラマや映画、CMなどは、演者のスキャンダルのイメージを持たれてしまうので、きちんと詫びを入れなければならない。
あとは、
ーー恋人にも誤解を解く必要がある。
芽依に今彼氏がいることは、なんとなく気付いていた。普段に比べて浮かれたりするわけではないけど、さすがに10年以上も一緒にいると、些細な変化でも目に付くようになる。
芽依はモテる。
彼氏の有無に関わらず、彼女に言い寄る男はたくさんいるし、虎視眈々と隣の座を狙っている俺のようなタイプもいる。
だから彼氏がいることは別に珍しくも何ともないわけで、いちいち一喜一憂することはもうなくなった。
俺は芽依とそういう関係になったことはないけど、彼氏の気持ちを考えるとまぁ同情はする。実際同業者と付き合って、相手が俺ではない別の誰かと熱愛を囁かれたときは、こんな冷めてる性格でも一応複雑な気持ちにはなったもんだ。
ニノどしたの、と力無く微笑む彼女を横目に、姿もわからぬ男を哀れむのであった。
拝啓、可哀想なアンタへ
(お気持ちはお察しします)