マネージャーと楽屋に入ってくるなり、みんなにお話がありますという芽依の顔は、いつもより強ばっていて。

彼女の言う話が何かなんて、みんななんとなく察していた。
芽依に限らず、メンバーの誰かが神妙な面持ちで「話がある」とマネージャーを引き連れているときは、良い話ではまずない。



今度週刊誌にわたしの記事が出ます


――そして大抵は、熱愛だのなんだので、メディアを騒がすことになるときだ。



マジか

みんなにも迷惑かけると思う、ごめんなさい

…内容は?

「俳優の向井理さんとの熱愛」


マネージャーの言葉に、ピクリと大野さんの眉毛が反応する。芽依は俯いたままだ。


「写真も撮られてるけど、決定打になるものではないからいつも通りこっちは否定するから、何か聞かれても合わせるようにね」

はーい


正直、こういうことはそこまで珍しいことでもない。たぶんみんな一通りは経験している。
特に芽依の場合は、ジャニーズ唯一の女性ということもあって、昔からあることないこと記事にされることが多かったので、もうこちらは慣れっこです。

けど、同じグループのメンバーというだけで、記者達から色々と問いただされることもあるので、状況だったり回答内容は確認しておく必要がある。


え、てかよくOKしたね

「一応向井さんの事務所とも話し合って、お互いの宣伝にもなるっていうのと、そこまでイメージダウンには繋がらないだろうからという結論に至った感じ」

……

なるほどね

「まあ詳しくは本人に聞いて」

昨日散々話し合ったから。

そう言ってマネージャーは忙しげに楽屋を出て行った。

芽依が大きく溜め息を吐く。


お疲れ

ん、ごめん色々と


疲れの色を隠し切れていない表情の芽依。
ちょうど今は映画のプロモーション活動で、通常よりも忙しくしている時期に、事務所からも色々と言われたのだろう。自業自得と言ってしまえばそうなのだが、やはりそれだけでは考えられないのは、俺がコイツに甘いからなのか。


あのね、一応言っておくと、本当に付き合ってないの

え、あ、そうなんだ

うん、なんだけど、…昔付き合ってたのは事実だから、あながち間違ってはないというか

どのタイミングを撮られたの?

…この前ちょっと飲み過ぎちゃって…。気付いたら理くんが迎えに来てくれてて


…ほんとこの子は。
迎えなら俺らがいくらでも行くっていうのに。

それを伝えると、どうやらそのとき飲んでたメンバーは2人が別れたことを知らず、いらぬ気を遣ったらしい。


はあ……

芽依、

ん?

俺らのことは気にしなくていいから、他んとこはきちんとフォローしなよ


スキャンダルひとつでイメージダウンしてしまうこともある俺らの仕事。
それがたとえ真実ではなかったとしても、メディアから拡散された情報は、瞬く間に視聴者の心を揺さぶってしまう。
たとえばドラマや映画、CMなどは、演者のスキャンダルのイメージを持たれてしまうので、きちんと詫びを入れなければならない。

あとは、
ーー恋人にも誤解を解く必要がある。

芽依に今彼氏がいることは、なんとなく気付いていた。普段に比べて浮かれたりするわけではないけど、さすがに10年以上も一緒にいると、些細な変化でも目に付くようになる。

芽依はモテる。

彼氏の有無に関わらず、彼女に言い寄る男はたくさんいるし、虎視眈々と隣の座を狙っている俺のようなタイプもいる。
だから彼氏がいることは別に珍しくも何ともないわけで、いちいち一喜一憂することはもうなくなった。

俺は芽依とそういう関係になったことはないけど、彼氏の気持ちを考えるとまぁ同情はする。実際同業者と付き合って、相手が俺ではない別の誰かと熱愛を囁かれたときは、こんな冷めてる性格でも一応複雑な気持ちにはなったもんだ。

ニノどしたの、と力無く微笑む彼女を横目に、姿もわからぬ男を哀れむのであった。





拝啓、可哀想なアンタへ
(お気持ちはお察しします)