守れなかった約束
今日は芽依抜きの5人で仕事。前に様子がおかしかった日以来芽依には誰も会っていない。何度かメールしてみたりしたけど、大丈夫の一点張りだった。
ようやく5人全員終わってそろそろ帰るかってとき、コンコンとノックの音。「どうぞ」と翔くんが返事をして顔を覗かせたのは山Pだった。
「あっれ、山Pじゃん!どうしたの?」
「たまたま撮影場所同じって聞いたんで。あの、芽依いますか?」
「芽依は今日別だけど。用でもあったの?」
「‥芽依ってもう仕事終わってるかわかりますか?」
「知らねぇけどなんで?電話でもしてみれば一発じゃない?」
「それがさっきからしてるんですけど繋がらなくて」
おいらも電話してみたけど聞こえてきたのは電話に出れないことを知らせる女の人の声。まだ仕事中だから出れないんじゃないの?そう言っても山Pの顔は曇ったままで。
見かねた翔くんが芽依の送り迎えをしているマネージャーに電話をかけた。
「なんでそんな深刻そうな顔してんの?アイツに何かあったの?」
「‥まだ何も言ってなかったのか」
「は?」
「‥‥芽依、今ストーカーがいるんです。だから毎日家に着いたら連絡するように言ってるんですけど、今日はまだ無くて」
タイミング良く電話を終えた翔くんが戻ってきて一言。「随分前に返したって」‥‥嘘だろ。翔くん以外の5人が顔を見合わす。
「え、なんでそんな顔してんの?芽依のことだし携帯放置してんじゃねぇの?」
訳がわからない翔くんには後で説明するとして。おいら達は楽屋を飛び出した。
山Pはどうやらまだ仕事が残ってるらしい。悔しそうに「芽依のこと、頼みます」と言ってきた。
とりあえず今日自分の車で来た松潤の車に5人が乗る。勿論目的地は芽依の家。
その間に翔くんにさっき山Pから聞いたことを説明すると顔を真っ青にした。
「また芽依のこと気付いてやれなかったね‥」
「いつになったら俺らのこと頼るようになるの、あの人は」
心配そうに顔を歪める2人。ミラー越しに見えた松潤も同じような顔をしていた。
正直、山Pには言っておいら達に言ってくれないのが悲しかった。そんなに嵐って頼りない?5人もいるんだからせめて1人くらいには‥。
なーんて。多分芽依に頼ってもらえる山Pが羨ましかったんだと思う。いつも彼は芽依のことをわかっている。‥嫉妬ってやつだ。こんなときにまで、おいらって奴はどこまで黒い人間なんだろう。
やっとの思いで芽依のマンションに着いてインターホンを押しても応答は無くて。仕方なく前に芽依から貰った合鍵(嵐は全員持ってる)でロックを解除する。
おいら達がエレベーターに乗り込むとき、入れ違いに出てきた男性をニノが見つめた。
「ニノ?どうかした?」
「‥今の、ここの警備員だ」
「ニノ早く乗れって!」
去っていく背中を見つめたままのニノに松潤が声をかけると「あぁ、ごめんごめん」と乗り込んだ。
なんでわざわざ警備員に反応したのかわからなかった。けど、このときニノはおいら達にはわからない何かを感じとっていたのかもしれないね。でもおいらでもわかったよ。あの男から俺達がよく知った匂いが漂っていたこと。
目的の階に着いてドアノブを廻すと、やっぱり簡単にソレは開いた。悪い予感しかしてなかった。
「芽依ー?俺らだけど」
もう夜だというのに部屋は真っ暗だった。足を進めると何かを蹴ってしまった。翔くんが電気を点けて確認するとそれは芽依の携帯で。画面には山Pの話通り宛先が彼へのメール作成画面で“今帰りました”とうってある。
「芽依―――!」
携帯に夢中になっていたおいらと相葉ちゃん以外の3人は先に部屋に入っていて、寝室を覗いたときだった、翔くんの顔が変わったのは。
おいら達も急いで翔くんの後ろから覗き込む。
そこには、無事を祈っていながらも頭の片隅で予想していた光景が広がっていた。
乱れたシーツに破られた芽依の服、独特のあの臭い。そして虚ろな表情で涙を流す芽依。
「芽依、」
「やだっ、来ないで!」
その瞳に何も映さないまま俺は拒絶された。
ひとまずこの部屋を出てリビングで5人それぞれの場所に座る。
「‥芽依のこと、守れなかったね」
相葉ちゃんの言葉がずしりと胸に響いた。
そうだ、おいら達は約束したんだ。芽依を泣かせない、守るって。それなのに今、芽依は泣いている。傷ついている。
「――くそっ!」
ニノが拳を机に叩きつけた。そこには普段“冷静”と言われる二宮和也はいない。
「とりあえず女の子呼ぼう。俺らじゃ芽依に近づけないから」という松潤の提案で、ニノとも仲が良く芽依の親友の戸田恵梨香ちゃんを呼び出すことにした。ニノが電話で事情を話すとすぐに来てくれた。
「ごめんね、こんな遅くに」
「いえ、それは大丈夫です。芽依は?」
「寝室にいるよ。悪いけど様子見てやってくれる?」
「勿論です」
戸田ちゃんが寝室に入って芽依の名前を呼ぶ。
「恵梨香…?」
「うん、そうだよ。あたし近付いても大丈夫?」
頷く芽依。ゆっくりと近付き戸田ちゃんは芽依を抱き締めた。
「恵梨香ぁ‥っ私、私――!」
「おにぃから事情聞いてるから。もう大丈夫。怖かったね…」
「いきなり部屋入ってきて‥っ。ベッド連れてかれて、それで――」
「わかったから。今は思い出さなくてええから」
俺達は部屋の外でただ聞いてるしかなかった。
守るって誓ったのに…。結局は泣いている芽依を目の前にして何もできないんだ。
無力な自分に腹が立って唇を噛み締めた。なんだか血の味がした。
守れなかった約束
ようやく5人全員終わってそろそろ帰るかってとき、コンコンとノックの音。「どうぞ」と翔くんが返事をして顔を覗かせたのは山Pだった。
「あっれ、山Pじゃん!どうしたの?」
「たまたま撮影場所同じって聞いたんで。あの、芽依いますか?」
「芽依は今日別だけど。用でもあったの?」
「‥芽依ってもう仕事終わってるかわかりますか?」
「知らねぇけどなんで?電話でもしてみれば一発じゃない?」
「それがさっきからしてるんですけど繋がらなくて」
おいらも電話してみたけど聞こえてきたのは電話に出れないことを知らせる女の人の声。まだ仕事中だから出れないんじゃないの?そう言っても山Pの顔は曇ったままで。
見かねた翔くんが芽依の送り迎えをしているマネージャーに電話をかけた。
「なんでそんな深刻そうな顔してんの?アイツに何かあったの?」
「‥まだ何も言ってなかったのか」
「は?」
「‥‥芽依、今ストーカーがいるんです。だから毎日家に着いたら連絡するように言ってるんですけど、今日はまだ無くて」
タイミング良く電話を終えた翔くんが戻ってきて一言。「随分前に返したって」‥‥嘘だろ。翔くん以外の5人が顔を見合わす。
「え、なんでそんな顔してんの?芽依のことだし携帯放置してんじゃねぇの?」
訳がわからない翔くんには後で説明するとして。おいら達は楽屋を飛び出した。
山Pはどうやらまだ仕事が残ってるらしい。悔しそうに「芽依のこと、頼みます」と言ってきた。
とりあえず今日自分の車で来た松潤の車に5人が乗る。勿論目的地は芽依の家。
その間に翔くんにさっき山Pから聞いたことを説明すると顔を真っ青にした。
「また芽依のこと気付いてやれなかったね‥」
「いつになったら俺らのこと頼るようになるの、あの人は」
心配そうに顔を歪める2人。ミラー越しに見えた松潤も同じような顔をしていた。
正直、山Pには言っておいら達に言ってくれないのが悲しかった。そんなに嵐って頼りない?5人もいるんだからせめて1人くらいには‥。
なーんて。多分芽依に頼ってもらえる山Pが羨ましかったんだと思う。いつも彼は芽依のことをわかっている。‥嫉妬ってやつだ。こんなときにまで、おいらって奴はどこまで黒い人間なんだろう。
やっとの思いで芽依のマンションに着いてインターホンを押しても応答は無くて。仕方なく前に芽依から貰った合鍵(嵐は全員持ってる)でロックを解除する。
おいら達がエレベーターに乗り込むとき、入れ違いに出てきた男性をニノが見つめた。
「ニノ?どうかした?」
「‥今の、ここの警備員だ」
「ニノ早く乗れって!」
去っていく背中を見つめたままのニノに松潤が声をかけると「あぁ、ごめんごめん」と乗り込んだ。
なんでわざわざ警備員に反応したのかわからなかった。けど、このときニノはおいら達にはわからない何かを感じとっていたのかもしれないね。でもおいらでもわかったよ。あの男から俺達がよく知った匂いが漂っていたこと。
目的の階に着いてドアノブを廻すと、やっぱり簡単にソレは開いた。悪い予感しかしてなかった。
「芽依ー?俺らだけど」
もう夜だというのに部屋は真っ暗だった。足を進めると何かを蹴ってしまった。翔くんが電気を点けて確認するとそれは芽依の携帯で。画面には山Pの話通り宛先が彼へのメール作成画面で“今帰りました”とうってある。
「芽依―――!」
携帯に夢中になっていたおいらと相葉ちゃん以外の3人は先に部屋に入っていて、寝室を覗いたときだった、翔くんの顔が変わったのは。
おいら達も急いで翔くんの後ろから覗き込む。
そこには、無事を祈っていながらも頭の片隅で予想していた光景が広がっていた。
乱れたシーツに破られた芽依の服、独特のあの臭い。そして虚ろな表情で涙を流す芽依。
「芽依、」
「やだっ、来ないで!」
その瞳に何も映さないまま俺は拒絶された。
ひとまずこの部屋を出てリビングで5人それぞれの場所に座る。
「‥芽依のこと、守れなかったね」
相葉ちゃんの言葉がずしりと胸に響いた。
そうだ、おいら達は約束したんだ。芽依を泣かせない、守るって。それなのに今、芽依は泣いている。傷ついている。
「――くそっ!」
ニノが拳を机に叩きつけた。そこには普段“冷静”と言われる二宮和也はいない。
「とりあえず女の子呼ぼう。俺らじゃ芽依に近づけないから」という松潤の提案で、ニノとも仲が良く芽依の親友の戸田恵梨香ちゃんを呼び出すことにした。ニノが電話で事情を話すとすぐに来てくれた。
「ごめんね、こんな遅くに」
「いえ、それは大丈夫です。芽依は?」
「寝室にいるよ。悪いけど様子見てやってくれる?」
「勿論です」
戸田ちゃんが寝室に入って芽依の名前を呼ぶ。
「恵梨香…?」
「うん、そうだよ。あたし近付いても大丈夫?」
頷く芽依。ゆっくりと近付き戸田ちゃんは芽依を抱き締めた。
「恵梨香ぁ‥っ私、私――!」
「おにぃから事情聞いてるから。もう大丈夫。怖かったね…」
「いきなり部屋入ってきて‥っ。ベッド連れてかれて、それで――」
「わかったから。今は思い出さなくてええから」
俺達は部屋の外でただ聞いてるしかなかった。
守るって誓ったのに…。結局は泣いている芽依を目の前にして何もできないんだ。
無力な自分に腹が立って唇を噛み締めた。なんだか血の味がした。
守れなかった約束