それでも彼らは優しかった
みんなが帰ったのを確認してから、洋服や下着などを何枚か鞄に詰めた。暫くはホテルで寝泊まりしようと思う。さすがに襲われた場所じゃ寝れないし、何よりアイツが警備員をしているこのマンションじゃ安全のヘったくれもない。もう少し落ち着いたら引っ越そう。
***
ホテルにマネージャーに迎えに来てもらった。自宅じゃなくホテルということに違和感を感じたようだったが、私の顔を見て何かがあったことは察したらしく、何も聞いてこなかった。一睡もできなかったためコンタクトが入れれず眼鏡だし、目も腫れている。今日はメイクさん大変だなんて思いながら車に揺られてテレビ局へと向かった。
いざ局に着いたものの、楽屋には程遠い廊下の隅で足は止まってしまった。何も知らないスタッフさん達が通り過ぎる度に挨拶される。その中には当たり前だけど、男性もいる。――やっぱり怖い。無意識のうちに体が震えてしまう。そして、足を進める先にも男5人が待ち構えているかと思うとどうしても進めなかった。
「渡辺さん」
声をかけられ振り返るとよく知った俳優さんが。確かこの人、今日のゲストだったはず。
「あ、おはようございます」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
どうしよう。
怖い。
この人は何も知らないんだから、しょうがないのに。体が震えを増す。笑顔も引きつる。
そんなとき少し離れた場所からその俳優さんを呼ぶ声が聞こえた。
「松本さん。今日はよろしくお願いします」
「あ、こちらこそ。あの、なんか今日のことで話あるみたいでスタッフさんが呼んでましたよ」
「本当ですか?わざわざありがとうございます」
それじゃあまた、と私にも挨拶をして彼は走り去っていった。彼に隠れて見えなかった潤くんが視界に入る。依然私との距離は開いたまま。
「おはよ、芽依」
「 おはよう」
「いつも芽依が着替えてる部屋、空けてもらったからさ。今日はそこ使うといいよ」
それだけ言うと潤くんは楽屋に戻ろうと歩き始めた。
‥昨日、私を心配して疲れてるのにわざわざ来てくれた5人に、酷いことを言ってしまった。きっと、傷つけてしまった。
それなのに。
こうして私のことを考えてくれて、助けてくれた。楽屋の件だって、スタッフさんに交渉してくれたんだと思う。きっと潤くんだけじゃない、5人共。
「‥潤くん!」
ゆっくりと振り返る。
「ありがとう、!」
潤くんは優しい笑顔で頷き、楽屋へ入って行った。
何も悪くないみんなでさえ怖い自分への苛立ちとよくわからない安心感と、それからみんなの優しさに対する涙が頬を伝った。
それでも彼らは優しかった
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ホテルにマネージャーに迎えに来てもらった。自宅じゃなくホテルということに違和感を感じたようだったが、私の顔を見て何かがあったことは察したらしく、何も聞いてこなかった。一睡もできなかったためコンタクトが入れれず眼鏡だし、目も腫れている。今日はメイクさん大変だなんて思いながら車に揺られてテレビ局へと向かった。
いざ局に着いたものの、楽屋には程遠い廊下の隅で足は止まってしまった。何も知らないスタッフさん達が通り過ぎる度に挨拶される。その中には当たり前だけど、男性もいる。――やっぱり怖い。無意識のうちに体が震えてしまう。そして、足を進める先にも男5人が待ち構えているかと思うとどうしても進めなかった。
「渡辺さん」
声をかけられ振り返るとよく知った俳優さんが。確かこの人、今日のゲストだったはず。
「あ、おはようございます」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
どうしよう。
怖い。
この人は何も知らないんだから、しょうがないのに。体が震えを増す。笑顔も引きつる。
そんなとき少し離れた場所からその俳優さんを呼ぶ声が聞こえた。
「松本さん。今日はよろしくお願いします」
「あ、こちらこそ。あの、なんか今日のことで話あるみたいでスタッフさんが呼んでましたよ」
「本当ですか?わざわざありがとうございます」
それじゃあまた、と私にも挨拶をして彼は走り去っていった。彼に隠れて見えなかった潤くんが視界に入る。依然私との距離は開いたまま。
「おはよ、芽依」
「 おはよう」
「いつも芽依が着替えてる部屋、空けてもらったからさ。今日はそこ使うといいよ」
それだけ言うと潤くんは楽屋に戻ろうと歩き始めた。
‥昨日、私を心配して疲れてるのにわざわざ来てくれた5人に、酷いことを言ってしまった。きっと、傷つけてしまった。
それなのに。
こうして私のことを考えてくれて、助けてくれた。楽屋の件だって、スタッフさんに交渉してくれたんだと思う。きっと潤くんだけじゃない、5人共。
「‥潤くん!」
ゆっくりと振り返る。
「ありがとう、!」
潤くんは優しい笑顔で頷き、楽屋へ入って行った。
何も悪くないみんなでさえ怖い自分への苛立ちとよくわからない安心感と、それからみんなの優しさに対する涙が頬を伝った。
それでも彼らは優しかった