珍しく仕事が午前中で済んだので、携帯の買い替えをしに行くことにした。偶然恵梨香もオフだったらしく、着いて来てくれることになった。


嵐全員での仕事はあの日の翌日以来無かった。その代わり3人とか4人とかはあり、その都度私は個人の楽屋を用意してもらえた。不思議がるスタッフさんもいたけどメンバーが上手く言ってくれてるみたいだった。


智久にも連絡はしておいた。すると既に聞いていたようで(おそらくニノに)、時間が経ったらまた会おう、と返事が来た。




「ごめん、お待たせ」


ホテルまで恵梨香の車で迎えに来てもらい、そのまま携帯ショップへ。
自分の車を使うにはあのマンションへ帰らなければいけない。イコール、アイツと会う可能性があるということだ。警察に通報することも考えたが、職業上騒がれてしまうことも有り得る為やめた。悔しいけど仕方ない。


わざわざごめんね

「何言うてんの、頼れ言うたやん」



恵梨香とは、会うことはなかったもののこまめにメールや電話をくれていた。



信号が赤になった。あ、と声を漏らして携帯を弄りだす。そして私に渡してきた。

訳もわからないまま画面に目を落とす。



この前はありがとな。しぃが来てくれてマジで助かった。
そんなしぃにもう一つお願いがある。できるだけ芽依のこと気にかけてやってほしい。やっぱり男は怖いみたいで俺は近くにいてやれないから。あと、無理しないように見張ってて。多分あいつ自分のこと責めると思うから。芽依は何も悪くないのに。
お願いばっかごめんな。しばらくは芽依を頼んだ。




…これ、

「おにぃから。こんなのお願いされなくてもするつもりやったっつーの」


前を見ながら恵梨香は笑う。


「芽依が自分を責めちゃう気持ち、わからなくもないよ。けど、間違ってもおにぃ達はそんなの望んでない」
‥‥‥

「おにぃ達は、芽依の心からの笑顔を待ってる」



嗚呼、また泣いちゃったよ。でもこれは私の所為じゃないよ、こんなメールを陰で送ってたニノの所為。


恵梨香に一言断りを入れて、鞄から携帯を取り出し電話をかける。
呼び出し音が鳴ったと思ったらすぐに出た。私の名前を呼ぶ声がなんだか懐かしい。


もしもし、ニノ?

どうした?大丈夫なの?


第一声から心配の言葉をかけられるなんて。
隣を見ると恵梨香が頷いてくれた。


今ね、恵梨香と一緒にいてね。メール見せてもらったの

‥しぃのやつ、芽依に見せたのかよ

すごく嬉しかった。あんなにもニノが私のこと考えてくれて

‥うん

だからね、少しずつ克服していこうと思って。まだ直接話すのは難しいけど、電話ならできそうな気がしたから

ん、できてんじゃん、今



自分なりに男性恐怖症について調べてみた。そしたらちゃんとした治療法は無いってわかったの。逃げないことが大事だって。だけど無理したらまた怖くなっちゃうから少しずつ。

そして私は今日、小さな一歩を踏み出した。

まだまだだけど、この前リーダーがどれだけ時間かかっても俺達は待ってるよってメールくれた。これで私には待っててくれる人がいるってわかったの。


みんなとまた、笑い合いたいと思った。

だから私、頑張るよ。





小さな一歩

(時間はかかっちゃうけど、着実に一歩一歩踏みしめた)